2013 Fiscal Year Research-status Report
ミュオンスピン緩和法で見る有機太陽光発電材料中の電荷移動
Project/Area Number |
25620155
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
渡邊 功雄 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 専任研究員 (40260195)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | μSR / 電子伝導 / 有機太陽光発電 / 有機材料 / 低次元性 |
Research Abstract |
本研究は、太陽光発電に資する有機材料の研究・開発において、ミュオンスピン緩和法(μSR)を用いて電子の移動を微視的立場から解明し、材料開発への寄与を行うことが目的である。これまでは、有機太陽発電用物質の一種であるPoly(3-butylthiophene-2,5-diyl)における電子の移動度およびその次元性に関する研究を展開しており、その実績をもとにした研究展開を図っている。平成25年度においては、有機太陽光発電にもっとも有効とされている有機材料物質であるP3HT: ZnOを用いたナノサイズ微結晶を用いたμSR測定を展開した。また、その関連物質でもある、半導体物質Spiro-Linked Compoundの測定も行った。両物質ともに低次元性を有しているために、これまでの測定結果同様に低次元性をもった電子伝導の振舞を観測することができた。つまり、有機太陽光発電に資する物質は概して低次元性、特に1次元的な電子伝導を特量として有することが判明した。 今後は、光があたった状態でこの電子伝導の様子がどのように変化していくかを調査する測定を実施する。試料に光を当てたり当てなかったりする条件を整え、その光照射タイミングとミュオンの入射タイミングを同期させることによって、発電時における電子伝導の様子を解明していく。特に、電子の移動の次元性や移動度と定量的に解明すうることを目指していく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究機関前半は試料の吟味およびμSRの基礎的展開を図ることが主とした目的であった。この目的に比して、実際の実験データの取得を行うことができ、また、そのデータに基づく電子伝導の低次元性を確認することができた。このような結果をもとに、次年度における光照射の効果を確認し、μSRを用いた微視的観点からの提言を可能にできたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針でもっとも重要なことは、有機材料に対して光を照射したことにおける電子伝達の変化とμSRでとらえること、およびその測定から電子伝達に関する微視的・定量的パラメタを解明することを目指す。初年度で有機材料に対するμSRの有効性が確認されたため、次年度においてはそこから定量的情報を引き出し、太陽光有機材料開発への提言を行うことを目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究対象試料の選別に予想外の時間を要した。本研究はインドネシアの研究グループとの連携協力が重要であるが、インドネシア側における研究者の組織体制にやや変動があり、試料を吟味すべき十分な時間が確保できなかった。一方、この組織体制の変化があったにも関わらず、当初予定していたよりも試料製作が極めて順調にすすみ、検討していた以上に短い試料合成試験で本試料を作成することができた。このため、試料合成のための消耗品費が節約できた。また、実際のμSR測定のための海外旅費も、共同研究者の方々の努力により独自の資金を獲得することにより節約することが可能になった。 μSR測定のための海外渡航費、および研究発表・打ち合わせの旅費はほぼ計画通りに執行可能である。また、試料合成に関わる消耗品費も計画に沿った拠出を考えている。一方、前年度からの繰越金は、電子伝導をより高度にかつ定量的に解析するために必要なミュオン位置情報を計算するために関わる人員への謝金および磁場印可装置の制御に関わる制御基板装置の消耗品費へあてることによって、より研究の精度および成果の高度化を図ることを目指す。
|