2015 Fiscal Year Annual Research Report
原生動物との共培養下で分離可能となる難培養性細菌の探索
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25640118
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
多羅尾 光徳 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60282802)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 微生物保全 / 生物多様性 / 微生物多様性 / 異種間相互作用 / 原生動物 / 細菌群集構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
細菌の捕食者である原生生物が細胞外に分泌する物質(protozoan extracellular exudates, PECE)がシグナル物質・増殖促進因子となって生残性や生育が促進される細菌が存在するとの仮説を立て,これを検証するため,二つのアプローチで研究を行った。①PECE存在下でコロニーを形成したり,生育する細菌を分離培養する。②PECEが淡水の細菌群集構造に影響を及ぼすか検証する。モデル原生動物としてセン毛虫Tetrahymena thermophilaを用いた。 T. thermophilaのPECEを含む平板寒天培地に淡水環境から採取した細菌群集を塗抹して培養した結果,平板寒天培地にPECEが含まれるときのみコロニーを形成する細菌を分離・培養することに成功した。獲得した細菌のうちKR-5-D株について詳細な検討を行った結果,PECEはKR-5-D株の生育以外にも,色素生成能やフロック形成能を促進する作用のあることが確認された。16S rRNAの小サブユニットの塩基配列を解析した結果,Sediminicoccus roseaと最も近縁性が高かった。 淡水から採取した細菌群集を液体無機培地に接種し,T. thermophilaのPECEで培養(PECE培養区),T. thermophilaと共培養(共培養区),細菌群集のみを培養(無処理培養区)の,3つの培養系を設定した。16S rRNA小サブユニットの塩基配列の違いに基づいて各培養系の細菌群集構造をクラスタ解析した結果,各培養系は互いに異なるクラスタに属し,群集構造が大きく異なった。特にPECE培養区は,接種した細菌群集の初期の群集構造と同じ構造を維持した。PECEは細菌群集構造の安定化に寄与する作用がある可能性が示された。 以上の結果より,PECEによって生残性や増殖が促進される細菌が存在する可能性が示された。
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