2013 Fiscal Year Research-status Report
希少元素回収・環境浄化を目指したイオノフォア開発研究
Project/Area Number |
25660085
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
植木 雅志 独立行政法人理化学研究所, 長田抗生物質研究室, 専任研究員 (90312264)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 微生物代謝産物 / セシウム / 環境浄化 / イオノフォア |
Research Abstract |
イオノフォアは、細菌類が生産する低分子化合物で、陽イオンと特異的に複合体を形成し、生体内で陽イオンの移動に関わっている。その複合体は疎水的で、細胞膜の透過性がよく、結果として陽イオンの膜透過性を容易する。イオノフォアの構造と、それに結合する陽イオンのイオン半径は密接に関わっており、イオノフォアの陽イオンの特異性は極めて高い。本研究では、微生物が生産するイオノフォアの探索を行い、環境浄化に貢献するイオノフォア開発を目指した。 微生物培養抽出物からCs+に特異性の高いイオノフォアの探索系の構築を開始した。多種類の微生物、特に放線菌や糸状菌を、環境サンプルより分離し、培養を行い、各株の培養抽出液を得た。これを、ピクリン酸のセシウム塩と混合し、一定時間後有機溶媒で、イオノフォアとピクリン酸セシウム塩の複合体を抽出し、有機層がピクリン酸の黄色を呈するか否かで、セシウムと結合能を有するイオノフォアの生産を検出することを試みた。しかし、(1)微生物が生産する有色物質に黄色を呈する物質が多く、色(特定の波長の吸光度)での検出が不可能であったこと、(2)質量分析機を用いたCs+を直接検出する系では、培地中のアミノ酸類が極めて近傍にシグナルを示すため、Cs+特有のイオンと断定することが不可能であったこと、などから探索系の構築が困難であった。しかし、抽出する有機溶媒に、ジクロロメタンを用いることによって、アミノ酸類の混入を排除でき、かつMSでのCs+の高感度検出が可能であることを見いだした。 Nonactinをポジティブコントロールとして、微生物培養抽出物からの探索系を構築したところ、Nonactinの含有量が0.5 ug/ml程度でも検出可能であり、濃度依存的に検出できる事が分かった。現在、この探索系を用いて、目的の性質を有する微生物培養抽出液を探索中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、想定していなかった探索系構築の困難さがあったが、構築した探索系を用いて、微生物代謝産物中に目的の物質の探索を開始している。すでにいくつかの株を選択しており、さらに確認の実験を進めているところであり、計画通りに順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、微生物培養抽出液を用いて探索を行い、目的の物質を生産している株を見つけ出す。すでに候補として選択されている株が生産している物質を、その株の大量培養液から精製し、構造決定を行う。さらに、セシウムの浄化、つまり土壌中に含まれるセシウムを溶出できるか、などの試験を行い、環境浄化に使用できるかの検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試薬・消耗品をより安価に入手することが出来たため。 試薬・消耗品費として使用予定。
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