2015 Fiscal Year Research-status Report
希少元素回収・環境浄化を目指したイオノフォア開発研究
Project/Area Number |
25660085
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
植木 雅志 国立研究開発法人理化学研究所, 伊藤ナノ医工学研究室, 専任研究員 (90312264)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 微生物代謝産物 / セシウム / 環境浄化 / イオノフォア |
Outline of Annual Research Achievements |
イオノフォアは、細菌類が生産する低分子化合物で、陽イオンと特異的に複合体を形成し、生体内外で陽イオンの移動に関わっている。その複合体は疎水的で、細胞膜の透過性がよく、結果として、陽イオンの膜透過性を容易にすることにより、抗菌活性・細胞毒性を示すものも少なくない。イオノフォアの構造と、それに結合する陽イオンのイオン半径は密接に関わっており、イオノフォアの陽イオンの特異性は極めて高い。 微生物代謝産物の中からセシウム特異的に結合する化合物のスクリーニングを行ってきたが、5000株の培養抽出液の中から2株の候補株と思われる株を見出した。目的の物質は、比較的親水性が高く、UV 280nm付近に極大吸収を持つことが示唆された。しかし、生産性が不安定であり、化合物の同定には至らなかった。生産性が安定する培養条件を検討したうえで、化合物の同定を行う必要がある。候補としている培養抽出液を、土壌に吸着させたセシウムの溶出実験を行ったが、有意に差異のある結果を得ることができなかった。セシウム溶出の条件も詳細に検討する必要がある。 また、高濃度セシウム存在下での耐性を指標として、セシウム吸収・吸着微生物も同時に探索を行った。その結果、2株の酵母を候補として見出し、18S rDNA配列解析から、Hanseniaspora属酵母、Kluyveromyces属酵母であると考えられた。これらのセシウム蓄積性について検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
これまでに5000種類の微生物培養抽出液を対象に探索を行ってきたが、2株由来の抽出液が候補として見出された。しかし、生産の不安定性、親水性・低分子量であることから、物質精製に時間を要しており、同定には至っていないため、当初の予定から遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、微生物培養抽出液を用いて探索を行い、目的の物質を生産している株を見出すことを継続する。これまでに見出されいる2株に関しては、候補物質の生産性が安定な条件を検討する。また、土壌に吸着したセシウムの溶出試験を構築する。
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Causes of Carryover |
微生物代謝産物の中からセシウム特異的に結合する化合物のスクリーニングを行ってきたが、5000株の培養抽出液の中から、2株の候補と思われる株を見出した。しかし、生産性が不安定であり、化合物の同定には至らかったため、延長が必要となった。また、同時にHanseniaspora属酵母、Kluyveromyces属酵母を単離し、これらのセシウム蓄積性を確認するため延長が必要である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
微生物同定のための配列解析や、クローニングのための遺伝子工学的試薬の購入にあてる予定である。
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