2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25660129
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
久保田 多余子 独立行政法人森林総合研究所, 東北支所, 主任研究員 (70353670)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
香川 聡 独立行政法人森林総合研究所, 木材特性研究領域, 主任研究員 (40353635)
児玉 直美 兵庫県立大学, 環境人間学部, 任期付研究員 (60594611)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / クロマツ / 塩害 / 年輪 / セルロース / 炭素同位体比 |
Outline of Annual Research Achievements |
東日本大震災の津波を受けた海岸林クロマツは幹折れなどの壊滅的な被害を受けた。直接的な被害をまぬがれ、震災直後健全に見えたクロマツ林においても2011年夏以降、塩害による衰弱や枯死が見られるようになった。 一般に、乾燥などの水ストレスを受けると植物の炭素同位体比(δ13C)が高くなることが知られている。しかしながら、樹木が海水をかぶった場合の年輪セルロースのδ13C変化はマングローブ林に対する研究のみであり、塩害については調べられていない。そこで、東日本大震災で津波被害を受けたクロマツにおいて、δ13Cがどのように変化して枯死に至ったのか、また、δ13Cの大小によって樹木が受けたストレスを定量的に評価できるのかどうか調べた。 成長錐を使い、クロマツの年輪コアを、海岸側から内陸に向かい、宮城県亘理郡山元町で10個体、青森県三沢市五川目で4個体採取した。また津波被害を受けなかった内陸のクロマツを各地域で4個体ずつ採取した。年輪コアから薄片を作成し、セルロースを抽出した後、2008年~2011年にかけての年輪を1年輪につき4~16等分して、δ13Cの変化を調べた。山元町の試料についてはセルロース抽出をせず、δ13Cを分析した。 津波被害木は無被害木に比べて震災年(2011年)のδ13C値が有意に高かった。また、震災前のδ13Cは早材で小さく晩材で高くなるような季節変化を示していたが、2011年においては早材からδ13Cが高く、光合成活動開始時から浸透圧に逆らって水を吸収することができなかったことを示していた。このことに加え、2011年8月の乾燥も重なって、9月以降の多雨によって土壌塩分濃度が下がるまで持ち堪えることができなかった個体は枯死したと考えられた。δ13Cの値の大小は個体差が大きく、海岸からの距離および土壌塩分濃度については明瞭な関係が見られなかった。
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Research Products
(1 results)