2014 Fiscal Year Research-status Report
干潟間隙水の塩分安定化作用およびそれを介した生物間相互作用に関する研究
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25660148
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鬼倉 徳雄 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50403936)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊豫岡 宏樹 福岡大学, 工学部, 助教 (40432869)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 河口干潟 / 間隙水 / 塩分 / 無脊椎動物 / 生物間相互作用 / DEM解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、多くの干潟生態系研究において注目されていない「干潟内間隙水中の塩分」に着目し、その干潟内間隙水中の塩分を介して生物間相互作用が働くことで、干潟の高い生物生産と豊かな生物多様性が支えられている可能性を探ることに挑戦する。その仮説は、「アナジャコ類等の無脊椎動物の生息孔から満潮時に干潟内に浸入した高濃度の塩分が、干潮時にそのまま残留することで塩分が安定し、結果として干潟に生息する生物が多様性を堅持できる」といった塩分安定化を介した生物間相互作用である。 平成26年度の計画は、前年度に確認された「干潟内間隙水中の塩分の安定化」が普遍的に起こる現象かどうか、すなわち、広域的に起こる現象であることの確認である。今年度は、当初計画よりも対象河川を増やし、九州北部地域の十数か所にロガーを設置し、いずれの箇所でも潮汐周期が一回りする約2週間、干潟の地盤下と河川の環境水の塩分計測を実施し、安定の程度は異なるものの、概ね、全ての調査対象地において「干潟内間隙水中の塩分の安定化」が確認できた。また、塩分安定化作用の程度における地点間の違いには、干潟の微地形が関連する可能性が示唆されたため、当初計画では想定していなかったマルチコプターを使った空撮を行い、その画像から干潟の地盤高を計測する技術を確立した。なお、これらの成果の一部は、応用生態工学会、日本水環境学会九州支部研究発表会、土木学会西部支部研究発表会で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の当初の仮説である「間隙水塩分濃度の安定化の立証」は初年度に確認済みであり、また、無脊椎動物の巣穴から直接、環境水を取りだし、塩分を実測する技術も構築済みである。そして、本年度は、実証された「間隙水塩分濃度の安定化」作用が、広域的に起こる現象であることを複数の河川で確認できた点が、極めて大きな進展である。 また、研究計画時には想定していなかった塩分安定化の河川間の相違を生じさせる要因を解明するための下準備として、空撮によるDEM解析技術も構築できた。研究は、予想を超えて大幅に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度、福数河川で塩分安定化作用を確認し、またそこでの塩分安定度の算出を終えており、最終年度はそれらの生物多様性および各種生物の生息密度を実測し、塩分の安定化と生物との関連性を解析する必要である。また、これまでの調査対象は中小河川の河口域に限られたため、大規模な河川での同現象の確認が必要である。最終年度に、1級水系の球磨川河口域で実施予定である。
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Causes of Carryover |
基金の繰り越しがあるが、調査人員を減らすなどで、人件費が減ったこと、年度をまたぐような調査を行う可能性を事前に想定していたことが、その理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度であるため、繰り越し分も含めて、確認のための調査の実施、データ解析などで予算を使用する計画である。
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Research Products
(3 results)