2013 Fiscal Year Research-status Report
熱帯ダム貯水池における底泥環境の生成メカニズムと栄養塩循環機能の解明
Project/Area Number |
25660149
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
村田 智吉 独立行政法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 主任研究員 (50332242)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / ダム貯水池 / 底泥 / メコン川 / 物質循環 / リン / タイ / カンボジア |
Research Abstract |
経済発展が急速に進むメコン流域では数多くの発電用ダム開発が計画されている。一方,熱帯に建設されるダム貯水池の底泥環境の生成メカニズムやその栄養塩循環能については不明な点が多い。また,ダム貯水池では,人為的に沿岸部が形成されるという大きな特徴を有するとともに,集水域内の過去の土地利用形態や主要流入支川の流況などが貯水池環境を大きく左右するなど,天然湖沼とは異なる特徴をもつ。そこで,本研究ではメコン流域を対象に,熱帯ダム貯水池における底泥環境の,1)生成・堆積プロセスの解明と,2)リンなどの栄養塩循環の反応場としての機能評価を行うことを目的とする。 地理・地形的に特徴の異なるタイ、ラオスの複数のダム貯水池を対象に,陸域から湖心までの土壌・底泥調査トランセクトを設定し、柱状試料(以後コア試料)の採取とその観察を行う。柱状試料はさらに深さ毎に、粒度分布,粘土鉱物組成、元素組成,鉄化合物の形態分析,有機物含量とその形態に関する分析を行う。底泥各種成分の地形連鎖上での連続的変化から起源や堆積プロセスを明らかにする。また、底泥中のリン酸の可給化におよぼす各種成分との関係性,熱帯ダム貯水池特有の特徴などについても明らかにする。 初年度は主にタイの貯水池と比較対照の天然湖沼トンレサップ(カンボジア)について、陸域を含む底泥のトランセクト調査とコア試料採取を実施した。ダム貯水池底泥中の全リンは湖岸から湖心に向かって増大するという傾向を見出した。また,湖岸では主に生物やその分解産物に由来すると考えられる有機態リンが卓越し,湖心に向かって徐々に無機態リンが増大する傾向がみとめられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査対象地域のうちラオスを除くおおむねすべての調査地点で陸域から湖心にかけての土壌,底泥コア試料を採取することが予定通り実施できた。調査地域としては,カンボジアトンレサップ,ラオスナムグム,その他タイのいくつかの貯水池を残すのみとなった。現在,採取した底泥試料について分析処理を遂行中であるが,すでにリンについては湖心から湖岸にかけてのトランセクト上での広がりパターンや形態について一定の傾向をえることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き調査・試料採取を実施するとともに,底泥の理化学分析を行う。これら調査結果,分析結果より個々のダム貯水池の底泥堆積メカニズムを明らかにするとともに,底泥中のリンと湖水中のリンとの相互作用について検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定額のうち主に旅費が計画段階と異なるものとなったが,これらはカンボジアおよびラオスへの調査旅費分であり,昨年実施予定が今年度にずれ込んだことが原因である。 したがって,本年度は昨年度計画のカンボジアトンレサップ湖での底泥採取作業およびラオスナムグム湖での底泥採取作業を実施する。
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