2013 Fiscal Year Research-status Report
生体内不溶物質によるサイズ依存的なIL-1β産生経路の存在
Project/Area Number |
25670192
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
稲葉 カヨ 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (00115792)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高原 和彦 京都大学, 生命科学研究科, 講師 (90301233)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 微細粒子 / IL-1beta / アミロイド-beta / 尿酸結晶 / 炎症 |
Research Abstract |
マクロファージ(Mφ)等の免疫系細胞は、外来性だけでなく内因性の微細粒子および蛋白凝集体を捕捉しサイトカイン産生を介して炎症応答を惹起する。本研究では、ラテックスビーズ(LxB)、アミロイドβ凝集体および尿酸結晶等のMφおよび脳マイクログリア(MG)に対する炎症性サイトカインIL-1β産生誘導機構について検討する。平成25年度の研究から以下の結果を得た。 先に、骨髄由来Mφをリポ多糖と共に1,000、100および20 nm径のLxBで刺激すると1,000および20 nm のサイズのものが、それぞれROSおよびcathepsin B依存的にIL-1β産生する事を示した。そこで、同様にMGにもLxBサイズ依存的なIL-1β産生経路が存在するかを検討した。生後5日目のマウス脳より初代MGを調製し、リポ多糖とLxBで刺激したところ、骨髄由来Mφと同様に20 nm LxBでのみ細胞内に大きな空胞が形成された。次に、同様にMGを刺激し、活性酸素種(ROS)阻害剤N-acetyl-cysteine (NAC)およびcathepsin B阻害剤CA-74-MeのIL-1β産生に対する作用を見た。その結果、1,000 および20 nm LxBによるIL-1β産生は共にNAC(2.5 mM)の影響を受けなかった。一方で、20 nm LxBによるIL-1β産生はCA-74-Me(5 μM)により阻害されたが、1,000 nm LxBの場合は影響が認められなかった。他の炎症性サイトカインTNF-αおよびIL-6の産生はCA-74-Meの影響を受けなかった。よって、少なくともMGは、20 nm LxBに対してCathepsin B依存的かつROS非依存的経路でIL-1β産生を生じる事、すなわちMGのIL-1β産生にLxBのサイズに依存した細胞内応答経路が存在する事が明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述の様に、LxBを用いてMGにも粒子サイズ依存的なIL-1β産生応答経路が存在する事を明らかにした。この結果は、今後のアミロイドβ凝集体および尿酸結晶を用いる研究の基盤になるものである。 一方、MGに対するシリカのサイズ依存的な影響は、当初コンパクターによるシリカの分級を検討していたが、市販のものが利用できるようになったため、これを用いて再検討する事とした。現在、当該シリカの粒径、ゼータ電位および比表面積などの物性の測定を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
25年度のLxBの結果を基に、生体内で凝集体を形成するアミロイドβ(Aβ)についても、その形態がMGのIL-1β産生に影響するかを検討する。すなわち、Aβはナノメータ径のoligomerと繊維状のfibrilを形成するので、その両者でMGにおけるIL-1β産生誘導能および産生経路の違いを検討する。その為に、in vitroでAβペプチドよりoligomerとfibrilを作製し、原子間顕微鏡で形状を確認した後に、MGの刺激に用いる。この際に、前述の阻害剤を用いて、IL-1β産生におけるAβ形状依存的な細胞応答経路の有無を検討する。 Aβに加えて、生体内で生成するmonosodium urate(MSU)結晶についても、同様にIL-1β産生とそのサイズおよび形状の違いとの相関を検討する。その為に、MSUを遠心により粗分画し骨髄由来Mφ等に加え、IL-1β産生を上記阻害剤を交えて検討する。また、MSUは脂肪酸と結合し、TLR2を介してIL-1β産生に働くとの報告もあるので、この刺激におけるIL-1β産生経路についても検討する。 以上の実験から、生体内で生じる粒子および凝集体においても、それらの形状およびサイズによって細胞が異なる応答を示す事を明らかにすると共に、それらが関与する疾患の新たな治療法開発の基盤を提供する。
|