2015 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質の高次構造情報に基づく医薬分子設計に向けた基盤的技術の創出
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25670206
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
大西 なおみ 公益財団法人がん研究会, その他部局等, 研究員 (50507217)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ワクチン抗原 / 分子設計 / 炭疽 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は新規抗炭疽ワクチンの開発に結実させることを最終目的とし、抗原候補分子を新規人工タンパク質として設計のするための基盤的技術を創出することを目的として遂行された。具体的には、炭疽菌毒素タンパク質複合体 (約500kDa) をモデルとし、構造生物学的およびデータベースを活用した計算科学的手法を総合的に用いて得られる分子表面上の形状と物性上の特徴情報に基づき、標的領域と一致した分子表面形状を示す新規人工タンパク質の設計方法を構築する。研究期間内には少なくとも3分子の設計を試みたが、これまでのところ2種類の人工タンパク質の大量精製法の確立に時間を要し、作出した分子の結晶構造解析には至らなかった。代替策として計画していたNMR法などによる構造解析については準備が進んでおり、次の段階へ進むことが期待される。しかし、当初の目標を達成するためには、結晶構造解析による高分解能での解析が必須であり、タンパク質の精製プロトコル、保存方法のさらなる検討を要すると考えている。 尚、本研究の2015年度の計画に基づく炭疽菌ゲノムの大規模シーケンス解析について、新学術領域「ゲノム支援」の2015年度の支援課題に応募して採択され、国内外でアウトブレイクを引き起こした炭疽菌株ならびに炭疽菌に近縁のセレウス菌強毒株の全ゲノム解析を行った。その結果、2012年に東京都内の病院で発生した敗血症セレウス菌アウトブレイク株、及び岐阜県内の病院で発生したアウトブレイク株合計35株の全ゲノム配列を取得することに成功し、我が国に蔓延するセレウス菌の炭疽様病態を引き起こすという重要な表現型を決定づけるゲノム上の特性について解析を開始することができた。本研究から得られた知見を総合し、今なお世界各地で流行する炭疽の克服戦略の一環として重要な進捗があったと考えている。
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