2014 Fiscal Year Research-status Report
乳幼児突然死への新しいアプローチ -未知なる死因・誘因の検索
Project/Area Number |
25670343
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
宮石 智 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90239343)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 香 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 非常勤研究員 (40599784)
北尾 孝司 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 准教授 (60218047)
高田 智世 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 講師 (70310894)
山崎 雪恵 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 非常勤研究員 (60444676)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 乳幼児突然 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳幼児突然死の死因・誘因として従前は着目されていなかった心臓の形態異常、サイレントな或いは極めて短い経過の細菌感染、劇症Ⅰ型糖尿病、唾液アミラーゼを指標とした突然における生活ストレス意義、並びに剖検試料からの不顕性先天代謝異常診断の可能性について、研究の進捗を図った。 心臓の形態異常について、 成人突然死事例での心臓横断面における左右心腔の面積比はばらつきがみられたが、総じて非突然死例より大きい傾向にあった。左心室全体に対する左心室腔の面積比は20-40%程度で、やはり非突然死例より大きい傾向が見られた。 細菌感染について、Cronobacter sakazaki に関しては、成人突然死事例でも消化管から検出されなかった。心臓血の血液培養では、血液の採取手順により結果が大きく異なる事例の存在が判明し、これまでのデータの見直しの必要性について検討中である。気道試料の細菌培養については、データの系統的整理まではできなかったが、収集については一定の進捗をみた。 劇症Ⅰ型糖尿病については、死体血漿中1,5-AGの法医診断上の意義を論文の纏めた。これにより成人突然死事例における劇症Ⅰ型糖尿病の剖検診断への可能性が拓けたが、実際にこれが疑われる事例に遭遇し、その診断について検討中である。その他の糖尿病関連指標についての検討は、上記を確実に進捗させるために一時休止とした。 唾液アミラーゼを指標とした突然における生活ストレス意義の検討では、データの分析まではできなかったが、データ収集については進捗をみた。剖検試料からの不顕性先天代謝異常診断の可能性についても同様であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、従前は着目されていなかった乳幼児突然死の死因・誘因について複数の視点からアプローチするものであるが、着目する事象が突然死に関係ない病態としては見いだされないことの担保、或いは死後変化として生じうる変化を除外しての判断が必要である。またそれら事象が乳幼児に特異的なものであることも担保されなければならない。そのような視点から、平成25年度は成人非突然死例を中心とした検討であったが、平成26年度は成人突然死例の検討に中心を移した。劇症Ⅰ型糖尿病と心臓の形態異常の視点、並びに感染症の視点の一部では想定通り、ないしそれ以上進捗をみたが、感染症に関する検討の一部、生活ストレスの意義と不顕性先天代謝異常の剖検診断の可能性については、幾分遅れがでた事から、やや厳しい総合評価として上記の自己評価とした。 具体的には、心臓横断面における左右心腔の面積比を指標とした心臓の形態異常の検討では、突然死と非突然死で異なる傾向を見いだすことができた。細菌感染の視点からは、Cronobacter sakazakiについては成人では非突然死の原因には成っていないと考えられる結果を得た。血液と気道試料の分析は、想定外の事実が発覚したことなどもあり、進捗はやや足踏み状態となった。劇症Ⅰ型糖尿病については、1,5-AGの検査が剖検診断に資すること、また成人実際例で剖検診断の可能性を検討する段階へ進み、明確な進捗がみられた。 唾液アミラーゼを指標とした突然における生活ストレス意義、剖検試料からの不顕性先天代謝異常診断の可能性については、年間200体以上の法医解剖の負担も影響してデータの蓄積に止まった。なお小児虐待に関する研究に、本研究の一部が虐待の認定の視点から貢献した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、想定通りないしそれ以上進捗をみた検討項目があった一方で、幾分遅れがでた部分もあった。これまでの経過に鑑み、所謂虻蜂取らずにならないために、最終年度では多角的に設定した検討項目に重みづけを付加して研究を推進する。 心臓の形態異常については、乳幼児死亡例での検討へ研究を進める。成人では非突然死例と突然死例とに違いがある傾向が見られたので、乳幼児でも何らかの違いが見られる可能性がある。 細菌感染については、血液や気道試料の検討では、想定外の事象に遭遇するなどして遅れが出てしまったが、Cronobacter sakazaki の消化管感染については、乳幼児突然死例で検出されれば、これまで指摘されたことのない死因ないし誘因として意義が解明につながることが期待されるところまで進捗したので、今後の研究はこの視点に焦点を絞って優先的に研究を進め、血液や気道試料の検討は努力目標としたい。 劇症Ⅰ型糖尿病については、これによる突然死の可能性が大きい成人の実際例で、剖検診断として可能であるか否かをまず十分に検討する。その上で、その診断基準での乳幼児死亡例への適用を図る。 突然死における生活ストレス指標としての唾液アミラーゼの意義、並びに剖検試料からの不顕性先天代謝異常診断の可能性については、前者を主、後者を副として成人死亡例のデータ解析と乳幼児死亡例のデータ収集へと研究をすすめる。
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