2014 Fiscal Year Research-status Report
抗体エフェクター機能におけるIgG脱糖鎖化を起こす脂溶性因子の作用機序
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25670456
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
増田 豊 秋田大学, 医学部, 講師 (20199706)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アナフィラキシー / IgG / 糖鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、繰り返し免疫するときに血中に増加する脂溶性因子がIgG抗原特有なアナフィラキシーを抑制する機構を解明し、抗体エフェクター機能における糖鎖部分の構造変化との関連を明らかにすることである。 マウスに卵白アルブミン(OVA)を繰り返し注射し免疫すると、アナフィラキシーを起こす個体が見られるが、血清中の抗OVA抗体IgGを精製し、Fc領域の糖鎖を除去したIgGをマウスに静注しておくと、OVAを再度注射すると引き起こされるアナフィラキシーショックが顕著に抑制されることを見出した(Guo et al., Biomed. Res., 2003)。また、このときのマウス血中の抗OVA抗体IgGに付加する糖鎖へのフコース付加が特異的に増加してくることを見出した(Guo et al., Clin. BiocChem., 2005)。フコース付加は抗体のエフェクター機能を抑制することが知られており、抗OVA抗体IgGの細胞傷害活性(ADCC活性)を低下させると考えられる。さらに、繰り返し免疫で血中に増加する脂溶性因子を含む画分を精製し、OVAと同時にマウスに静注するとアナフィラキシーショックが顕著に抑制されることを見出した。繰り返し免疫していないマウスから同様の分離操作で得た脂溶性画分にはそのような効果が認められないことから、繰り返し免疫の後に血清中にアナフィラキシー反応を制御する未知の脂溶性因子が産生していると考えられる。繰り返し免疫の前後の脂溶性画分を分析したところ繰り返し免疫で増加する脂溶性画分は特定のレクチンに反応性を示し、糖鎖を含んでいることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに、OVAを繰り返し免疫したマウス血清を採取して脂溶性因子の精製と解析を行った。血清をクロロホルム/メタノールで抽出後、DEAEカラムクロマトグラフィーにより分画した250-300mM NaCl溶出画分にアナフィラキシー抑制効果の最も高い因子が溶出していることを確認し、この画分が特定のレクチンに対して反応性を示すことをELISA法により分析してきた。しかし、レクチン反応性の特徴がクロマトグラフィーで隣接する各画分で重複する場合があることや、繰り返し免疫のタイミングのわずかな違いが微量な活性画分の分離に大きく影響することなどがわかり、活性画分の分離と含まれる因子の分析を再度検討した。繰り返し免疫の条件を単純化し、分離方法も一定条件になるようにして、DEAEクロマトで300mM NaCl画分に最も活性が高い因子が溶出することを確認した。複数のレクチンの反応性がこの画分で変化していることも確認できた。糖鎖をもつ因子の特定のためにさらに分析が必要である。また、本繰り返し免疫条件で血清IgGの糖鎖がどのように変化しているかについても改めて分析する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの解析結果から脂溶性因子を含む画分には糖脂質が存在する可能性が考えられる。今回の検討で活性画分の分離が一定にできたので、その活性画分の分析を計画の通り進める。また、単純化した繰り返し免疫条件で得られるIgGの糖鎖構造についてもその構造変化を主に質量分析装置を用いて分析する。
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Causes of Carryover |
26年度は活性画分の脂溶性因子の分析と抗OVA抗体IgGの糖鎖構造解析を行う予定であったが、活性画分の分離を一定にするために免疫条件と分離条件を再検討し時間がかかった。そのため、活性画分の脂溶性因子の分析とIgG糖鎖構造解析ために計画期間を延長し、使用予定の試薬の購入が少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度は活性画分中の脂溶性因子の分析と抗OVA抗体IgGの糖鎖構造解析を行う。脂溶性因子が糖脂質である場合は活性との相関を解析するために標品の使用も検討する。このための試薬物品費、分析機器費、共通機器使用費、研究補助事業者の人件費、また、成果発表のための学会参加の旅費などを研究費として予定する。
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