2013 Fiscal Year Research-status Report
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25670582
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大塚 隆生 九州大学, 大学病院, 助教 (20372766)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江上 拓哉 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (40507787)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 膵癌 / インクレチン / GLP-1 |
Research Abstract |
本課題の前段階の研究として膵神経内分泌腫瘍(pNET)切除例において、GLP-1受容体(GLP-1R)発現を免疫組織化学染色法で解析したところ、GLP-1Rが腫瘍転移巣において高率に発現しており、GLP-1がpNET細胞株の増殖能と遊走能を亢進することを見出した(Pancreas 2014)。これに引き続き当該施設で切除した48例の膵癌組織パラフィン包埋 (FFPE) 切片を用いてGLP-1Rの免疫染色を行い、膵癌におけるGLP-1Rの発現頻度、発現部位を調べ、臨床・病理学的因子との関係を調べた。GLP-1R発現は23例(48%)に認められたが、GLP-1R発現陽性群と陰性群の間で臨床病理学的因子、予後に差はなかった。一方、切除標本の染色領域を詳細に検討すると、GLP-1Rは腫瘍先進部で発現する傾向にあり、リンパ節転移巣に高率(73%)に発現していることが判明した。原発巣でのGLP-1R発現が陰性と判断されたにも関わらず、リンパ節転移巣が陽性判断されたものも2例含まれていた。従ってGLP-1Rが膵癌の転移、浸潤に関与している可能性が示唆された。GLP-1Rの機能を調べるために膵癌細胞株の中からGLP-1R発現の高い細胞株を選択し、GLP-1を投与して細胞株の浸潤能、遊走能、増殖能を調べたが、GLP-1投与による細胞株への影響を認めなかった。これを受けて、現在はGLP-1RのsiRNA投与によりGLP-1R発現を抑制した状態での影響を調べている段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H25年度には切除標本の免疫組織化学染色を行い、細胞株を用いたGLP-1Rの機能評価を終える予定であった。切除標本の発現解析は順調に進んだが、細胞株の実験で予想した結果が出なかった。これは細胞培養液中に多量のGLP-1が既に含まれており、これにより膵癌細胞株の活性が上昇して、GLP-1を新たに投与しても、大きな差として検出することができなかったものと思われた。細胞培養液がGLP-1を含有している可能性を考慮せず、GLP-1濃度や使用細胞株数、投与時間などの条件設定に長時間を要し、進行がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の細胞株の実験の遅れについては、GLP-1RのsiRNAを投与して、GLP-1R蛋白質発現を抑制する実験系を組み、培養液中のGLP-1の影響をも含めてGLP-1Rの機能を解析すること解消する。予備実験で、GLP-1RがsiRNAで抑制されることをmRNAレベルで確認し、GLP-1R抑制が細胞増殖能も抑制することを確認している。 GLP-1R抑制siRNA膵癌細胞内への導入法については、アデノウイルスによるRNAi導入効果を、膵癌細胞株を用いて検討する。また第二の方法として膵癌特異的表面マーカーを特定し、これを標的とした結合蛋白を合成し、癌細胞のエンドサイトーシスを利用した細胞導入を図る。膵癌幹細胞ではCD44, CD24などが特異的に発現していることが分かっており、これを中心に最も導入に適したマーカー検索を行う。導入効果についてはGFP蛋白質で可視化できる手法を確立しており、蛍光顕微鏡で簡便に導入効果を測定することができる。作成した抑制剤の効果はマウス膵癌肝転移モデルで確認する。膵組織と肝転移組織のFFPE切片を作成し、蛍光顕微鏡でGPF蛋白質の取り込み分布を観察し、癌特異的に取り込まれ、膵ランゲルハンス島などの正常組織には取り込みがないことを確認する。さらに免疫染色法を用いてGLP-1R発現が癌細胞のみで抑制され、かつ肝転移巣がコントロール群と比較して小さく制御されていることも確認する。同時に血糖値にも影響がないことを確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
切除標本の発現解析は順調に進んだが、細胞株の実験で予想した結果が出ず、GLP-1濃度や使用細胞株数、投与時間などの条件設定に長時間を要し、進行がやや遅れているため。 ガラス機器(20万)、試薬・抗癌剤(40万)、細胞株を用いた実験に必要なキット類(抗体25万、プラスミド10万、Western blotキット20万、アポトーシス解析キット20万)、マウス(1万x20匹x3グループ=60万)などの消耗品が経費となる。 これまでの状況から判断して、研究最終年に国内学会(4回/年を予定)、国際学会(1-2回/年を予定)などを旅費として、また欧米誌への学術論文投稿・掲載料を予定している。
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