2013 Fiscal Year Annual Research Report
細胞移植治療に於けるドナー・ホスト相互作用の解明と慢性期脊髄損傷研究への応用
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25713053
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岡田 誠司 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30448435)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脊髄損傷 / 慢性期 |
Research Abstract |
慢性期脊髄損傷に対する神経幹細胞移植の効果を検討すると同時に、慢性期環境に生着した神経幹細胞を選択的に回収、慢性期脊髄損傷環境に於いて神経幹細胞が機能しているかを、その発現遺伝子セットを網羅的に時勢大シークエンサーで解析することにより検討した。これまで、多くの論文で急性期あるいは亜急性期に神経幹細胞を移植した場合、神経栄養因子の発現や移植細胞がニューロンやオリゴデンドロサイトへと分化することで機能改善を促すと考えられている。しかし、慢性期損傷脊髄に移植した場合、生着率は急性期移植や亜急性期移植と同等であり、かつ発現遺伝子セットを解析した結果、ニューロンへの分化は最も促進されていることが明らかとなった。オリゴデンドロサイトへの分化は亜急性期移植が最も高かったが、正常脊髄あるいは急性期損傷脊髄へ移植された場合よりは有意に亢進していた。また、神経栄養因子の発現は慢性期環境が最も高かった。以上の結果は、たとえ慢性期損傷脊髄環境であっても、生着した神経幹細胞は十二分にその機能を有していることを示唆するものであるといえる。しかしながら、運動機能評価の解析を行ったところ、慢性期に移植しても運動機能改善効果は全く認められなかった。以上の結果は、移植細胞の機能をmodulateするよりは、生着環境、すなわち機能している生着細胞がその効果を発揮できないmicroenvironmentをmodifyする治療戦略が必要とされることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
慢性期損傷脊髄への神経幹細胞移植の効果を検討し、さらに慢性期環境に於ける神経幹細胞の選択的解析に成功した。これらの成果はStem Cellsへ論文として掲載され、さらにcover articleとしても評価された。また、生着細胞の選択的解析法として、セルソーターによる選択的回収に加えて、レーザーマイクロダイセクションによる解析法が立ち上がりつつあることから、当初の研究予定どおりおおむね順調に伸展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
移植された神経幹細胞が如何にしてホスト神経回路にintegrateされるかが機能改善の鍵と考えられる。そのため、移植神経幹細胞が生着環境によりシナプス形成に影響を及ぼすかを解析している。現在、あらかじめGFPを発現させた神経幹細胞を移植し、生着細胞のみを傾向顕微鏡下にレーザーで切り出し、シナプス関連蛋白、軸索輸送関連蛋白、シナプス伝達因子、神経伝達因子等の遺伝子発現の解析を試みている。特に、あらかじめ介在ニューロンをablationした場合に於いてはシナプス形成が著しく阻害され、cfosなどの神経活動性の指標マーカーも発現が低いことが現在までの実験で明らかとなっている。今後は、Tau-GFPマウスなど、神経細胞へ分化した際にマーカーを発現する遺伝子改変動物由来の細胞を用いて、より選択的かつ段階的に移植神経幹細胞のシナプス形成を解明する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初見積もっていた使用マウス匹数が、実験技術の向上と新技術開発により予定匹数よりも少ない数でデータが取れたため。 主に実験要動物ならびに抗体試薬を中心とした消耗品費に充てる予定である。
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Research Products
(10 results)