2014 Fiscal Year Research-status Report
科学的教養育成のための理科の指導方略と評価に関する研究
Project/Area Number |
25750074
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
三好 美織 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (80423482)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 科学教育 / 科学的教養 / 評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,フランスの中等教育段階であるコレージュ及びリセの科学教育を対象として,育成が目指される科学的教養の内実,育成に向けた指導の実態と評価方法の具体について,文献調査及びフィールドワークをもとに事例的検討を行い,以下の点が明らかとなった。 フランスの後期中等教育段階のリセでは,コースや教科により習得が期待される科学的教養の内実に差異が見られた。文学系,経済・社会系コースの「科学教育」では,科学的知識,問題解決過程の理解に加えて,社会問題における科学の争点の把握,市民性などが含まれていた。科学系コースの「物理・化学」では,科学的手続き,コミュニケーション,学習者の主体性など,「生命・地球科学」では,科学的手続き,コミュニケーションに加えて,環境・健康・生物世界に対する責任,科学の倫理的含意の認識などが含まれていた。科学系コースにおいて,科学的教養の習得状況は実技試験により評価され,バカロレアの得点にも組み入れられている。 コレージュやリセの授業では,科学的教養の育成に向けて,習得すべきコンピテンスの具体を学習プリント等に提示し,生徒に意識させながら学習活動を展開していた。科学的教養の習得状況の評価には,獲得した様々なリソースの動員を必要とする、状況問題や複雑な課題などが用いられている。バカロレアの筆記試験問題では,状況問題が用いられており,提示された情報を読み取り,習得している知識等を活用することが求められている。コレージュでは,状況問題などを用いた日常における評価の記録を総括し,「共通基礎知識技能」の習得状況を評価していた。教師には,学習課題や評価問題の作成,生徒の習得状況の見取りなど,指導能力の向上が必要とされており,教員研修などにおいて取り組みが行われている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科学的教養にかかわる評価方法及び評価規準について検討するため、以下の点について実施してきた。(1)フランスにおける科学的教養について、考え方を整理した。(2)学校教育における科学的教養育成に向けた指導方略に関する文献分析を行った。(3)初等教育段階及び中等教育段階における科学的教養育成のための指導方略の事例として、“La main a la pate”プロジェクトおよび“EIST”プロジェクトの検討を行った。(4)フランスの中等教育段階における、科学的教養育成の実態を明らかにするため、公立学校における授業観察及び教師へのインタビュー調査を実施した。(5)科学的教養の評価方法及び評価基準について検討するため、フランスの科学教科書、授業及び試験等で用いられている評価問題の分析を行った。よって、これまでのところ、実施計画に従いおおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は、学校の理科教育において科学的教養をいかに育成していくか、その指導方略を検討するとともに、児童・生徒の科学的教養の習得状況を評価する方法と評価規準を開発することを目的としている。最終年度は、これまでの成果を踏まえ、小学校から高等学校までの理科教育における科学的教養育成に向けた指導方略、科学的教養の習得状況の評価方法と評価基準の具体化を試みる。成果を理科教育関係学会等において発表し、有識者から意見を徴集する。
|
Causes of Carryover |
訪問先との関係で調査の一部を次年度に延期したため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画に従い、小学校から高等学校までの理科教育における、科学的教養育成に向けた指導方略、評価方法及び評価規準の具体化に向けた、情報収集、意見聴取の際に使用する。具体的には、科学教育関係図書、国内旅費等に使用予定である。
|