2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25750408
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 岳裕 東京大学, 教育学研究科(研究院), 研究員 (50632254)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 経頭蓋磁気刺激 / 運動学習 / 運動制御 / 片手・両手運動 |
Research Abstract |
両腕運動の神経プロセスは、反対側の腕運動条件に応じて切り替わることで柔軟な両腕運動が形成されることが運動学習を用いた行動指標による心理物理学実験データから示唆されている。これらの心理物理学的データをサポートするために、一次運動野への経頭蓋磁気刺激から記録できる皮質脊髄路の興奮性(運動誘発電位)を測定することで神経生理学的にも明らかにし、片腕・両腕運動の運動制御脳内プロセスを解明することを目的としている。 まず、等尺性運動での力発揮をモニター上に視覚化し計測できる両腕マニピュランダムの開発を行い、このマニピュランダムを用いて、片腕・両腕運動条件の統制を取り経頭蓋磁気刺激を用いて皮質脊髄路の興奮性評価を行った。右利き被験者の左腕を計測肢として常に一定の肘屈曲運動負荷をかけ、反対側の右腕は安静条件(つまり左腕のみの片腕運動条件、両腕条件の比較基準)や様々な運動形態を取らせた。 その結果、左腕は常に一定の運動条件下にあるにも関わらず、右腕安静条件(片腕運動条件)と比較して運動条件において皮質脊髄路の興奮性が高まることが示された。また、この運動条件を左右入れ替えたときには皮質脊髄路の興奮性の高まりは確認されなかった。これは左右の腕で片腕・両腕運動時の影響が異なり、利き手・非利き手に依存した両腕運動時の相互作用の違いを示唆するものである。具体的には、利き手(右腕)から非利き手(左腕)への影響が強く、非利き手から利き手への影響が弱い可能性を示した。 次に、80%の皮質脊髄路繊維は延髄で反対側に乗り換えるが、残りの20%は同側の皮質脊髄路を通ることが知られる。次年度は両腕運動時の同側性の皮質脊髄路や脳梁を介した半球間抑制の貢献を調査することと、運動学習課題を組み込んだ行動指標と神経生理学的な電気生理学的指標の比較検討を行い、片腕・両腕運動の神経プロセス探求を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、等張性運動の両腕運動におけるロボットアームマニピュランダム(KINARM)を用いた皮質脊髄路の興奮性を計測する予定だったが、最終的な目的である同側性の皮質脊髄路の興奮性を評価するための予備実験を行ったところ運動条件の設定が難しく、現在調整中である。そのため次善策として等尺性運動形態における実験系の確立を行い並行して研究を進めた。さらに実験データは筋電図電極から得るが、筋肉によってデータの得やすさが異なる。当初、上腕三頭筋だけに筋電図電極を装着する予定だったが、計測筋に上腕二頭筋、三角筋前部、三角筋後部も追加し網羅的にデータを記録した。その結果、上腕二頭筋が最適な計測筋であると判断し、データ計測を進めている。 新たな実験環境のセットアップでは、特注の両腕マニピュランダムを発注し、その後予備実験を執り行った。そのため運動条件の変更はあったが、これまでに計測したデータにおいて研究の目的である”片腕・両腕運動の神経プロセスの違い”を神経生理学的に示せるデータの確認ができた。片腕・両腕の運動制御における神経プロセスの違いを電気生理学的に示せたことは大きな一歩となった。さらに、両腕運動条件の中でも左右差の存在を示せたことは重要な知見である。現在この左右差は利き手、非利き手に依存するものだと予想しているが、さらなる実験系で明確にすることが重要である。現在は同側性の皮質脊髄路の興奮性評価のための実験系も進み、データ解析と得られたデータからの方針を今後決定していく。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究推進度は概ね予定通りであるが、平成26年4月から所属研究機関が変更になった。特注で準備したマニピュランダムや磁気刺激装置は前所属研究機関の所有物であり、今後のデータ計測は東京にて実験を進めることになる。これまでよりも進度が遅れる可能性はあるが、現所属研究機関から積極的に東京大学に赴き研究推進に遅れが生じないように努める。 等張性の運動形態における実験系が難しく現在調整中なので、研究の主軸を等尺性の運動形態による片腕・両腕運動時の神経プロセスの探究に変更する。現在までに基礎データが得られたので、今後は片腕・両腕運動での運動学習課題を含めた、より複合的な条件でのデータ獲得をめざす。運動学習課題は皮質脊髄路の興奮性を調整することが知られている。本研究においては対側性に加えて同側性の皮質脊髄路の興奮性の評価も行う。ここで重要なことは片腕運動と両腕運動の神経プロセスの違いを示すことで、片腕・両腕運動のそれぞれの運動条件ごとに、対側性と同側性の皮質脊髄路の興奮性それぞれを計測し評価指標とする。対側性の皮質脊髄路の評価は、参考できる先行研究や研究代表者の経験があるが、同側性の皮質脊髄路の興奮性評価を用いた研究は無いので試行錯誤しながら検討することになるだろう。しかし、3月までに計測した同側性の皮質脊髄路の興奮性評価のためのデータを基として方向性を定めることが可能だと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未使用額は平成25年度の使用予定額 (1,500,000円) の1%以下 (7,592円) であり、おおよそ予定通りの使用状況であった。平成26年度から所属研究機関の変更があり実験系が滞ることを避けるために、平成25年度末は実験を詰めて進める必要があった。本研究はヒトを対象とした実験のため、被験者への謝金支払いが伴う。そのため、いつ被験者が来ても対応できるように若干の余裕を持ちつつ直接経費を使用する必要があった。 未使用額はもともと実験被験者への謝金として使用する予定であったため、平成26年度も同様に実験被験者への謝金経費として使用する予定である。
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