2015 Fiscal Year Research-status Report
中世王朝物語の生成過程解明のためのジャンル横断的研究
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25770092
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| Research Institution | Seisen University. |
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Principal Investigator |
藤井 由紀子 (青谷由紀子) 清泉女子大学, 文学部, 准教授 (70551943)
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| Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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| Keywords | 中世王朝物語 / 兵部卿物語 / 物語文学 / 説話文学 / ジャンル間交渉 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、交付時の計画に具体的な分析作品として挙げていた『海人の刈藻』『兵部卿物語』の二作品のうち、『兵部卿物語』の基礎的な研究を進めた。
『兵部卿物語』は、他ジャンルである説話文学との交渉が予想される作品である。この点については、「夢」というテーマを軸として、広く平安・鎌倉の物語・説話両ジャンルにおける諸作品を比較した論文（標題：「〈懐妊をめぐる夢〉の諸相─説話と物語のあいだ─」）を発表することができた。これにより、本来、研究代表者の専門分野ではない説話文学に関する知識習得が進み、本研究の土台となるジャンル毎の特徴の差異を把握することが可能となったと考える。
『兵部卿物語』研究の基礎的な作業としては、他作品を含めた本文のデータ化、それを用いた語釈レベルでの作品分析に着手した。いまだ作業の途中ではあるものの、現段階で、この作品の成立が、時代的にはかなり下るものではないかという予測を立てている。今後のさらなる考究が必要ではあるものの、先行する諸注釈の指摘の不備なども発見しており、本作品の文学史における新たな位置づけが可能であるという見通しを立てている。
なお、今後も『兵部卿物語』の分析作業を継続して行う予定であるが、語釈のみでかなりの分量となることが予想され、また、他作品との語句レベルでの相互関係については、蓄積したデータを公開すべきであると考えるため、それらの成果をまとめ、最終年度に注釈本として出版することを企画し、出版社との交渉も開始したところである。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画における二作品（『海人の刈藻』『兵部卿物語』）の分析から、一作品（『兵部卿物語』）の分析に対象を変更した。『兵部卿物語』は他ジャンルである説話との交渉がうかがわれる作品であり、研究代表者の説話文学に対する知識習得が進んだために、優先して研究を行うことが、本研究課題の全体の進展を促すことになると考えたためである。その結果、着実に、基本データの整理や作品分析が進んだため、おおむね順調であると自己評価する。前年度に遅れていた基本文献の購入なども終わり、研究環境も整ったため、今後の研究はより円滑に進むものと思われる。
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| Strategy for Future Research Activity |
現在行っている『兵部卿物語』の本文分析を、語釈レベルで進めていくことが最大の目標となる。その際には、従来の研究ではあまり指摘されてこなかった中世王朝物語相互の影響関係や、他ジャンルである御伽草子との関係性についても、十分に考察していくこととしたい。説話や軍記物語との交渉についても、従来の指摘のみでは不十分であると考えている。成立年次の推測に繋がるような、新たな源泉を見出すことを目指したい。
これらの研究成果は、逐次論文として発表する他、最終年度には書籍の形でまとめることを考えているため、データの整理を継続的に行っていく予定である。
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| Causes of Carryover |
学生を雇用して基本作業を行わせる予定であったが、前年度にひきつづき、当該分野の大学院生がいない状況が続いており、「人件費・謝金」に予定していた支出がなかったため。その分を、遅れていた基本文献の購入費に充てて使用している。
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
未使用額は少額であるため、次年度の予定通りの研究計画の中で、問題なく使用できると考える。
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