2014 Fiscal Year Research-status Report
P・B・シェリーの感性の詩学と19世紀唯美主義の源流、1815‐1875年
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25770116
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
木谷 厳 帝京大学, 教育学部, 講師 (30639571)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 英語圏文学 / イギリス / ロマン主義 / P・B・シェリー / 19世紀 / 唯美主義 / 詩 / 美学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の2年目にあたる平成26年度は、前年度から整理を進めてきたP・B・シェリーの「感性の詩学」に関する研究をもとに、継続的かつ発展的な研究調査をおこなった。これを研究計画書に記載された実施計画・方法にもとづいて振り返ると、下記の通りとなる。 (1) シェリーの「感性の詩学」を体系的に整理するために、一次資料および関連する二次資料の精査を進めた。 (2) シェリーの「感性の詩学」という創作姿勢が、19世紀後半の英国における「唯美主義」的な詩人や芸術家にどのような影響を与えたかという点について研究を進めた。その際、考察対象となる「唯美主義」という概念を明確に定義するために、実際この時代に「唯美主義」について論じていたウォルター・ペイターの一次資料を精読し、本研究にとって必須となるテクストを選別した。また、本研究と類似性を持つ他の研究者の著作・論文を収集し、読み込んだ。 (3) 上記の「唯美主義」運動と不可分とされ、現在「ラファエル前派」と呼ばれている芸術家グループの代表的詩人画家D・G・ロセッティにも着目し、その一次資料の精読を進めた。その際、詩の「形式」(form)や「美感的なもの(美的=感性的なもの)」(the aesthetic)という側面にも注意を払った。また、これに関連して、現在の「文学理論」における美感的なものをめぐるイデオロギー、いわゆる「美学イデオロギー」(ポール・ド・マン)の問題系についても引き続き注意を払い、関連文献の調査と読解を進めた。 (4) 前年度までの研究調査をまとめ、シェリーの「感性の詩学」について国内外の学会で研究発表をおこない、また、シェリーの詩学と美学イデオロギー、および文学研究における「よろこび」(pleasure)の概念とを結びつけた論考の活字化をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度当初は「研究実績の概要」の項目で報告した成果以外に、1820~40年代の英国で発表された唯美主義的な詩および批評の一次資料調査・収集を予定していた。しかし、本年度は校務や所属学会を中心に事務的な仕事が重なったため、計画していた作業に遅れをとり、上記の点について具体的な研究を十分に進められなかった。したがって「やや遅れている」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
シェリーの「感性の詩学」との関連が予想される、1820~40年代に書かれた英詩および批評など一次資料の調査・収集を進展させる。同時に、その唯美的、感覚主義的な作風から「詩の肉体派」(The fleshly school of poetry)とも揶揄された詩人画家D・G・ロセッティらの調査を進める。これら二つのテーマをもとに、詩学的先駆者としてのシェリーの「感性の詩学」のなかに19世紀英国唯美主義の源流を具体的に見出してゆくことを目指す。 さらに、上記のテーマと関連性を持ち、また、現代の文学理論において重要なテーマの一つと目される「美学イデオロギー」(ポール・ド・マン)の問題についても引き続き調査を進めてゆく予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度末に注文した図書が取次先で品切れとなっており、年度内の納入が間に合わなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度未使用となった額は次年度に繰り越し、当初予定されていた物品費に充当する計画である。
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Research Products
(4 results)