『名公妙選陸放翁詩集』の編集と流伝についての基礎的研究

2013 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 25770135
• Research Category: Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
• Research Institution: Kyushu University
• Principal Investigator: 甲斐 雄一 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 専門研究員 (10637929)
• Project Period (FY): 2013-04-01 – 2016-03-31
• Keywords: 出版文化史 / 本文批判

Research Abstract

平成25年度においては、まず『名公妙選陸放翁詩集』の現存するテキストの比定及び系統付けを中心に研究を遂行した。具体的には、日本にのみ現存する元版（国立歴史民俗博物館所蔵）や五山版（学校法人大阪青山学園所蔵）に対して目睹調査を実施し、欠字の位置・異体字の一致・本文右側部に附される圏点の位置の一致などから、五山版が元版を忠実に模刻したものであること、また、後者が阪本龍門文庫（奈良県吉野町）所蔵の五山版と同版であることを確認した。元版と二つの五山版は極めて近いテキストであり、これらが、翌年度以降に実施する、中国の明版や日本の江戸期の和刻本において増補されたテキストと比較するための原テキストとしての価値を有するものであることが確認された。
また、上述の目睹調査と並行しながら、翌年度以降に本格的に実施する予定である陸游詩の全集である『剣南詩稿』85巻本及び20巻本目録（『中華再造善本』影印の宋版残巻）、そして同時期に編纂された絶句集『瀛奎律髄』との校勘作業に着手している。現段階で、『名公妙選陸放翁詩集』というテキストを通して、一部しか現存しない『剣南詩稿』20巻本の原型を推定できるのではないかという見通しを有している。
本年度は初年度であるため、当研究課題の基礎固めとなる目睹調査と各テキストの対校が実際の作業の中心となった。そのため、本年度内における学会での発表・雑誌論文の投稿には至っていないが、上述の調査報告という形で、次年度前半期での学会発表・論文投稿によって成果を発表する予定である。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

初年度に予定していたテキスト目睹調査の実施を進められたので、おおむね順調に進展している。

Strategy for Future Research Activity

当初の研究計画通り、後発の諸テキストとの校勘作業を進めていくことを第一とする。その過程において、必要に応じて中国・明版及び日本・江戸時代の版本に対する目睹調査を追加計画として実施したい。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

大阪青山歴史文学博物館への目睹調査は、平成25年度内に計画・準備されたが、当館との交渉の結果、調査実施日は平成26（2014）年4月4日となった。このため、当該調査のための旅費が平成26年度使用額となったこと、また、中華再造善本の王十朋『会稽三賦』という書籍を購入する予定であったが、市場に出回っておらず購入できなかったこと、この二つが次年度使用額の生じた理由である。
次年度使用額が生じた理由に述べた通り、平成26（2014）年4月4日に実施した大阪青山歴史文学博物館への目睹調査の旅費が4月22日現在精算処理中である。また、今回の調査で阪本龍門文庫にもテキストが所蔵されることを新たに確認したため、この資料調査にかかる調査費として使用する予定である。