2013 Fiscal Year Research-status Report
朝鮮語学書「講話」についての再検討-歴史記録との照合を手がかりに-
Project/Area Number |
25770163
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
許 秀美 龍谷大学, 文学部, 講師 (50612826)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 朝鮮語学書 / 講話 / 小田幾五郎 / 朝鮮王朝実録 / 対馬宗家文書 / 漂民対話 |
Research Abstract |
江戸・明治期に対馬や薩摩で編纂された朝鮮語学書の一部が今に伝わるが、その成立の背景については不明なものが多く、言語資料として利用するのが困難であった。しかし、「朝鮮語訳」等新資料に関する近年の研究結果から、これら語学書の成立の背景には対馬宗家文書などの歴史資料が深く関わっていることが明らかになってきた。本研究は、このような観点から、江戸・明治期に広く朝鮮語学書として使用された「講話」をとりあげ、歴史資料との照合を通してその成立背景を明らかにすることを目的とする。さらに言語資料としての価値を究明するとともにテキスト本文をデータベース化し、広く研究者一般の利用に供する。 初年度は、現存写本のうち京都大学文学部所蔵本につき、文献学的考証を実施し、同書会話文中にあらわれる、当時漂流民の口書の類を参照していると思われる部分や1750年代に日朝間で問題になった「単参改品」の記事、「八送使停止」の記事などの参照元と思われる朝鮮側に記録類を突き止めた。語学書「講話」と歴史資料との相互関係について、その照合結果を学会誌に投稿するため、現在論文の執筆中である。 2年目は「講話」の写本間の対照を実施し、その系譜関係について研究する。 最終年度は、本書の表記・音韻・文法・語彙を同時代の朝鮮の国内資料および日本の他の朝鮮語学書と比較し、その特徴、すなわち語頭複子音の喪失過程、アレア「・」の非音韻化、二重母音の単母音化、主格助詞の発達、文末待遇表現の変遷、漢字語と固有語の比率、日本語の干渉などに着目し、本書の言語資料としての価値を究明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたとおり、「講話」の会話文中にあらわれる記事の参照元と思われる朝鮮側に記録類を突き止め、語学書「講話」と歴史資料との相互関係について、現在論文の執筆中であり、それと並行し「講話」の写本間の対照のため、データベース作成にとりかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
「講話」の写本間の対照を実施し、その系譜関係について研究するとともに、「講話」を中心にした当時の朝鮮語学書の成立過程、系譜を考察する。また、本書の表記・音韻・文法・語彙を同時代の朝鮮の国内資料および日本の他の朝鮮語学書と比較し、その特徴を探る。具体的には、語頭複子音の喪失過程、アレア「・」の非音韻化、二重母音の単母音化、主格助詞の発達、文末待遇表現の変遷、漢字語と固有語の比率、日本語の干渉などに着目し、本書の言語資料としての価値を究明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度は、一年を通して本務校の公務出張が続いたため、予定していた調査の遂行に支障があった。 当初予定していた調査をおこなう。
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