2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25770172
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
田和 真紀子 宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (30431696)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高程度を表す副詞 / 極度を表す程度副詞 / 評価的な程度副詞 / 程度副詞体系 / 「イト」 / 「アマリ(ニ)」 / 史的変遷 / 過渡期 |
Research Abstract |
本研究は「高程度を表す副詞」の意味・機能が体系的に歴史上どのように変遷したかを明らかにすることを目的としている。 H25年度は本研究4か年のうち初年にあたるため、高程度を表す副詞の体系的な変遷の見通しを示す論文と、本研究課題に関する論文を単著で2本発表した。 前者は、「程度副詞体系の変遷―高程度を表す副詞を中心に―」(小林賢次・小林千草編『日本語史の新視点と現代日本語』勉誠出版、2014.3発行、67-81頁)である。本論文では、高程度を表す副詞の体系が歴史上どのように変遷し現在の体系に至ったのかを、古代語から近代語へと移りゆく過渡期の現象に注目しながら、現時点で明らかになっている範囲で概観し、その変遷の過程について見通しを示した。 後者は、「狂言台本の「アマリ(ニ)」─大蔵虎明本を中心に─」(『近代語研究』第17集、2013.10発行、61-78頁)である。本論文では、近世初頭成立の狂言台本・大蔵虎明本を調査対象とし、中世後期に高程度を表す副詞の代表的な語が「極度を表す程度副詞」の「イト」から「評価的な程度副詞」の「アマリ(二)」に代わった背景を明らかにした。本論文によって、「イト」から「アマリ(二)」への交替は、単なる語の入れ替えではなく、古代語から近代語への構造的な変化を背景として起きた体系的な現象であったことを指摘することができた。 また、本科研による研究の成果の一部を、本務先に進学を希望する高校生への説明会(オープンキャンパス、2013.7.21実施)で「変化する言葉―〈とても〉の意味の言葉の移り変わりから考えられること―」として紹介し、栃木県の教職員向けのサマーセミナー(2013.8.25実施)では「ことばから見える古典の世界」として紹介し、科研費による本研究を広く一般に知らせることに努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・科研費の活用によって、勤務・在住している栃木県内の図書館および他の研究機関に所蔵していない資料を購入することができたため、東京などの研究機関に赴かず研究を進めることができたため。 ・以前からの研究の蓄積によって、研究計画を立てることができたため。 ・体系的な史的変遷の概要を示すようなタイプの論文は投稿論文では掲載が難しいが、ちょうど出版幹事として携わった小林賢次・千草編『日本語史の新視点と現代日本語』に論文を掲載することができたため。 以上の理由から、おおむね順調に研究を進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまであまり調査を行ってこなかった近世以降の資料の調査を行っていく予定である。本研究を遂行する上での課題として、近世以降の資料の調査は経験が浅いため、資料の特徴や資料性について勉強する必要がある。近世以降の資料に関する日本語学分野の先行研究を元に資料について学びつつ、近代語学会での口頭発表などを通じて、近世以降の近代語の資料に詳しい研究者の方々からのアドバイスを得たい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究年に予定していた出張による調査および学会参加が、本務校での同僚の急死および後期土日に行われた教職実践演習での指導により行えなかったため。 予想よりも低価格で資料を購入することができたため。 初年度に行えなかった出張による調査および口頭発表を目的とした学会への参加を行う。
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