2014 Fiscal Year Research-status Report
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25770172
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
田和 真紀子 宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (30431696)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高程度を表す副詞 / 極度を表す程度副詞 / 評価的な程度副詞 / 程度副詞体系 / 中世後期 / 「ナカナカ(ニ)」 / 近世前期上方語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「高程度を表す副詞」の意味・機能が体系的にどのような変遷を遂げて、今日の体系に至ったのかを明らかにすることを目的としている。 平成26年度は、本研究4カ年の内2年目に当たるため、1年目に立てた体系変遷の見通しに基づき、大きな体系変化が起きたと推測される中世後期の共時的な副詞の諸相を明らかにする記述的な研究を行った。(該当論文1;「中世後期から近世初頭における高程度を表す副詞の諸相―高程度を表す評価的な程度副詞を中心とした体系と主観化傾向―」『国語語彙史の研究』34、和泉書院、2015.05) 次に体系変化期に見られる特徴的な現象を明らかにするため、語史上、中世後期のみ特殊な用法で用いられた副詞「なかなか(に)」を取り上げて、中世後期の特殊な用法(感動詞用法)の実態を、狂言台本(虎明本)を用いて明らかにし、その後の程度副詞用法と否定共起用法の派生との関係を分析した。(該当論文2;「感動詞・応答詞と評価的な程度副詞との連続性について─大蔵虎明本における「ナカナカ」の分析から─」『近代語研究』18、武蔵野書院、2015.02) さらに、体系変遷の見通しに基づき、中世後期以降の状況を明らかにするため、近世前期上方語の共時的な副詞の諸相を調査し、研究発表を行った。(該当発表;近代語学会・研究発表会「近世前期上方語の高程度を表す副詞の諸相と体系」2014.12.13、於白百合女子大学(調布市緑ヶ丘1の25)3号館2階3201教室) また、科研における研究の成果を、平成26年度栃木県高校教育研究会国語部会の招待講演「「品詞の落ちこぼれ」と私―日本語の歴史と副詞研究から見えてきたこと―」(2014.06.06、於栃木県立博物館講堂)として、栃木県の高校国語教員の方々に紹介することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・平成24年度に行った学会発表を元に論文を執筆することが出来たため。(該当論文1) ・中世後期の副詞については、すでに調査済みのものが多く、データを蓄積しており、其れを活かして論文執筆を行うことが出来た。(該当論文2) ・前年度に行えなかった学会発表は、まだあまりデータの蓄積及び資料に関する調査実績のない時代の資料を用いることとなったが、研究を進める上で必ず必要となるデータを収集する端緒となり、次の研究につながった。 以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の経験が浅い近世資料の調査を引き続き行うため、資料の特徴や資料性など勉強しながら、近代語学会の場などにおいて、近世資料に詳しい研究者の助言を仰ぎたい。その知見と調査を元に、平成27年度は、近世における共時的な体系の解明と、特徴的な副詞語彙におけるいわゆる狭義の近代(明治時代以降)に至るまでの通時的な変化の様相を明らかにする。
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Causes of Carryover |
教育学部の4年生担任として就職指導・教職実践演習等を担当し、さらに幼児の保育と急病の看病があったため、長期休みと土日祝日に予定していた調査および研究打合せに当てることができず、予定していた旅費を使用できなかった。 また、本年度の論文執筆が、手持ちの資料とデータで対応することが出来たため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、大学を移動したため、本研究を遂行するための資料が不足しており、大型辞典類および索引類を購入する必要がある。 すでに、『時代別国語大辞典』全6巻(20万)と、『狂言集の研究』等5冊揃(25万)の購入を予定している。
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