2016 Fiscal Year Annual Research Report
A study on the change of emphasis degree adverbs in Japanese
Project/Area Number |
25770172
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Research Institution | Seisen University. |
Principal Investigator |
田和 真紀子 清泉女子大学, 文学部, 准教授 (30431696)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高程度を表す副詞 / 評価的な程度副詞 / 発見的な程度副詞 / 古代語近代語過渡期 / 体系の変遷 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、本科研におけるすべての研究成果ならびに準備段階としての前回科研の成果を単著『日本語程度副詞体系の変遷』(勉誠出版、2017年5月)にまとめ、出版した。本書には、本科研期間の「近世前期上方語における副詞「タント」の程度限定用法について」(『清泉女子大学紀要』64号、p.p.17-31、2017年1月)までの論文を収録し、各章は既発表の一論文に対応しており、冒頭・序章は、書き下ろしと前回科研期間に執筆した3論文を大幅に加筆・修正した。また、論文の重複箇所の整理や表記の統一、研究の進展に伴う用語および本文の見直しを行った。 本研究では、程度副詞の評価的な側面に注目し、通時的変化にさらされにくい程度の認知傾向をもとにした「発見的な程度副詞」と「評価的な程度副詞」という分類を採用し、古代語近代語過渡期の高程度を表す副詞を中心に、その前後の時代の共時的な体系と、その体系を特徴づける程度副詞の通時的な変化の記述を行なうという方法を採った。本書ならびに本研究では、日本語程度副詞のうち、もっとも特徴的な「高程度を表す副詞」の史的変遷が単なる語の入れ替えではなく、古代語から近代語への構造的な変化を背景として起きた体系的な現象であったことを明らかにした。具体的には以下の通りである。 一、高程度を表す副詞の体系は、古代語の「発見的な程度副詞を主とする体系」が、古代語近代語過渡期の一時期、「評価的な程度副詞を主とする体系」へと変化した。 二、近世前期上方語では前時代から存続する「評価的な程度副詞」が使用される一方、新たに「発見的な程度副詞」が発生し、高程度を表す副詞は「評価的な程度副詞系」と「発見的な程度副詞系」による二系統併存状況となり、現代日本語程度副詞体系の基礎ができた。 本研究の重要性は、これまで明らかにされていなかった程度副詞の体系的な変遷を初めて明らかにした点にある。
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