2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25770228
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
堀田 幸義 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (20436182)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 無僕 / 無礼禁止令 |
Outline of Annual Research Achievements |
筆者は、これまで仙台藩伊達家を対象に、藩の供連規定をめぐる問題、行列と儀礼をめぐる問題、身分規制の緩和・弛緩をめぐる問題の3つの観点から近世武士の行列に関する研究を進めてきた。本研究では、新たな観点からの研究も視野に入れつつ(課題③)、まず、仙台藩に見られるような武士の行列をめぐる諸法令の存在を全国規模で確認し、その概要把握を行うとともに(課題①)、できるだけ多くの藩について個別具体的な検討を行い、仙台藩と相互に比較研究することを最終的な課題(課題②)としている。2年目にあたる平成26年度についても1年目同様に、主として課題①に関する作業を行った。その結果、以下のような成果を得ることができた。 まず、筆者は仙台藩を対象にした研究で、同藩では江戸時代を通じて幾度も民衆による士への無礼を禁止ずる触が出されるものの一向に解決できず、その裏には17世紀段階までに形成された名前・格好・供連・居住場所などに関する身分規制がもはや機能不全に陥り、「士凡混雑」状況が進行したことによって「士之威も薄ク」なっている社会的な状況が存在していたことを明らかにしているが、平成26年度に実施した本研究を通じて、こうした身分秩序の崩壊について他藩でも確認することができた。武士への慮外・無礼を禁ずる法令は、岡山藩・鹿児島藩・金沢藩・亀山藩・郡上藩・熊本藩・久留米藩・龍野藩・挙母藩・高崎藩・徳島藩・鳥取藩・盛岡藩でも出されていることが確認でき、金沢藩・久留米藩・龍野藩・徳島藩では、仙台藩同様に、藩士たちの無僕が無礼を誘発しかねないとの認識も確認することができた。 また、こうした身分秩序の紊乱をもたらす一要因として仙台藩でも問題となっていた武士たちの居住場所について、岡山藩・熊本藩・久留米藩・鳥取藩・盛岡藩でも問題化していたことが判明し、仙台藩との比較検討が可能となったことも成果の一つである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の3つの課題すべてをクリアするには多くの時間を要すと思われ、2年目にあたる平成26年度については、諸藩における行列関係史料の収集およびその概要把握(課題①)と仙台藩および他藩を事例にした新たな研究(課題③)を引き続き行い、かつ、課題①の成果を踏まえて仙台藩と他藩との比較研究(課題②)を開始する予定であった。 実際の作業を通して諸藩における行列関係史料の収集およびその概要把握という点では(課題①については)順調に進んだと言えるが、他藩を事例にした新たな研究(課題③)を行うことはできなかった。また、仙台藩との比較研究に相応しい藩を洗い出すことには成功したが、図書館等へ実際に足を運ぶための日程調整が上手くいかず現地調査せずに終わったため、他藩との比較研究(課題②)も想定していたほど進めることができなかった。 以上のような理由から、「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究に申請した段階での主たる目標は課題①と②にあり、課題③についても積極的に取り組んでいく予定ではあったが、2年目までの状況を考慮すれば、課題③に多くの時間を割くことはできないと思っている。また、申請書にも記載したことであるが、現在、筆者自身の研究をもとにした一般書の執筆に取り組んでおり、本研究の内容も当然盛り込んでいくつもりでいるため、やはり、まずは課題①と②に絞って作業していくべきだと考えている。今後は、入手していない刊行史料の購入と分析を計画的に行っていき、日程を調整しながら仙台藩との比較研究が可能な藩が存在していた地域の図書館等を実際に訪れ、史料を収集し分析していきたい。
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Causes of Carryover |
全国諸藩の法令集や御用留などの網羅的な調査を行うにあたって、当初は、時間的ロスを省くために刊行されている史料集を新しく購入する予定であったが、すでに入手済みの史料集のチェックで手一杯になってしまったため、さほど新たな史料を購入しなくて済んだことや、史料調査の日程を上手く調整することができず、結果として行かずじまいになってしまったことが大きな理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度の未使用分については、今のところ、刊行史料の購入費および現地調査の旅費等のほか、入手した史料の電子化処理とその保存・活用のための機材(パソコン等)の購入費にあてる予定である。
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