2013 Fiscal Year Research-status Report
近世大名課役変質と都市下層社会形成・構造化の関係の解明
Project/Area Number |
25770240
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
藤本 仁文 京都府立大学, 文学部, 講師 (90580580)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 都市下層社会 / 低賃金労働 / 請負 / 入札 / 手伝普請 / 人口流入 / 江戸 |
Research Abstract |
研究初年度である平成25年度は、全国各地に残る関係史料を調査し、その収集に努めた。大名家に残る関係史料に関しては、山口県文書館、岡山大学附属図書館、広島県立文書館にて、大名課役に関わった請負商人・日用層に関する史料の収集を行った。江戸の下層社会に関する史料については、東京都立公文書館・国立国会図書館にて、関係史料の収集を行った。これらの調査を通して、本研究に必要な史料をほぼ収集し終えた。 史料収集と並行して史料読解を進め、全国諸藩が大名課役を勤める際に、領内から派遣する家来・人足を削減していき、江戸の請負商人に委託するように変わっていくこと、最終的には幕府勘定所に必要経費を支払うだけとなること等が確認できた。またあわせて江戸における請負稼業の進展とも深く関わることが確認できた。日本におけるアウトソーシングや入札の始まりとも関わる重要な論点であることが分かり始めた。 これらの調査結果や研究実績をもとに、最終年度である平成26年度に向けて、史料翻刻を並行して行っている。平成26年10月に日本史研究会大会において、本研究の成果を総括する「幕藩体制の転換と都市社会」(仮)を報告する予定である。報告に向けて、収集史料や刊行史料の読解、その翻刻などの作業を続けながら、あわせてその成果が世界史の中でいかなる位置づけができるかを考察するため、ロンドンやパリなどの江戸と並ぶ巨大都市との比較検討を行う準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
史料調査を予定していたうちの主要な資料館・博物館に関しては、その調査を終えた。また収集した史料を読解する中で、当初想定していた、大名課役変質と都市下層社会形成の二つが深く関係していることが確認できた。これに加えて、江戸だけでなく、京都・大阪など大規模都市における人口流入の問題とも深く関連することが明らかとなった。 平成26年度は、これらの研究成果をまとめる作業を進め、平成26年10月にその成果を日本史研究会大会にて報告する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度である平成25年度の研究進捗状況はおおむね順調である。研究最終年度である平成26年度は、その成果を公表するための作業に入る。具体的には、平成26年10月に日本史研究会大会にて本研究の成果を報告する予定になっており、そのために必要な史料読解・翻刻などを行い、平成27年4月にはその報告内容が、『日本史研究』に掲載される予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度配当額にて、必要な物品・資料・図書を揃えることができた。研究を進める中で、江戸とロンドン・パリとの比較等、新しい研究課題が浮かび上がってきた。研究計画を今一度検討し直して、次年度に必要な図書・物品等を購入する必要が出てきたため、次年度に繰り越すこととなった。 研究計画当初、江戸をはじめとする日本の大都市について考察する予定であった。しかし同時期のロンドン・パリなど、都市への人口流入の問題など、世界史の中で位置づけ直す必要が生まれた。このため、次年度助成金を計画当初の予定通り、旅費・史料複写費を中心に使用し、次年度繰越となった1,935円に関しては、世界諸都市に関する図書の購入に使用する予定である。
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