2014 Fiscal Year Research-status Report
造船・港湾運送業のグローバルな空間編成とローカルな場所の動態に関する地理学的研究
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25770298
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
原口 剛 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (40464599)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 造船業 / 港湾運送業 / 空間 / 場所 / グローバル / ローカル / 労働の地理学 / 寄せ場 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、戦後の造船業・港湾運送業という港湾産業に着目し、資本のグローバルな空間編成過程とローカルな場所の社会文化の変容との相互関係を明らかにするものである。平成26年度においては、前年度から積み重ねた調査研究の中間的総括を行ない、また、最終的な総括に向けた準備作業を行なった。 本研究の独自性のひとつは、International Institute of Social History(IISH)の主催する共同プロジェクトの一環として進めることにより、研究成果を逐次的に海外へと発信しつつ、世界各地の研究者と議論を交わし洗練させるという点にある。本年度は、7月にベルリンのフンボルト大学において開催されたワークショップに参加し、世界各地の研究者による事例研究と照らし合わせることにより、本研究の議論を深化させた。また、この経験を踏まえ、これまで大阪の木津川造船を中心的事例としつつ進めてきた戦後造船産業の調査研究から得られた視点を櫻田和也氏(大阪市立大学)との共著論文としてまとめあげた。この原稿は、IISHが主催するプロジェクト〝A Global Labour History Project: the same boat?”の報告書の一章に所収され、2015年度に刊行される予定になっている。このほか、本プロジェクトをつうじて海外の研究者と交流を深め、e-mailをつうじて意見交換を続けている。 また、以上のように調査研究を深めるなかで、造船業・港湾運送業の盛衰と、都市日雇労働市場の最下層部である寄せ場の地域文化の形成・変容とのあいだに、きわめて深い関係性が存するという新たな知見を得ることができた。この点については、国内の学会発表によって逐次報告を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね当初の研究計画どおりに研究活動を進めることができた。とりわけ、ベルリンのワークショップにおいて研究の進捗状況を報告できたこと、次年度刊行予定の報告書に掲載予定の原稿をまとめ上げることができたことは、本研究にとって大きな進捗であった。また、寄せ場の歴史的系譜と、造船業・港湾運送業との関連について新たな知見を得られることができた点は、次年度の調査研究の展開に向け、大きな足掛かりとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度までに蓄積してきた研究成果を足掛かりとし、港湾地域の国際比較的な視座を広げると同時に、寄せ場の系譜に対し新たな知見から記述する可能性を探究していく。このように双方の視点から研究を深めることにより、グローバルかつローカルな都市記述が実現されるものと期待される。また、これらの事例研究を踏まえ、空間論や場所論および「労働の地理学」に対する理論的知見を精緻化させるとともに、造船業・港湾運送業の移転・縮小後の跡地利用についても、引き続き調査を実施する。そして、これらの調査研究を踏まえた総括的な知見を、国内外の学会において発信する。
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