2013 Fiscal Year Research-status Report
テロ資金供与防止条約による国際取引への影響-日韓米三国間の金融手続を事例に
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25780032
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
金 惠京 明治大学, 法学部, 助教 (30638169)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | テロ / マネーロンダリング / 比較研究 / 国際取引 |
Research Abstract |
昨年度は日本におけるマネーロンダリングの状況について分析を行った。当初の予定では、「銀行利用者の利便性がテロ対策により、どのように制限されたのか」をデータ等を基に検討することも法律の分析と共に行おうと考えていた。しかし、当該調査を金融庁や個々の銀行も行っておらず、実際の法律・監督省庁からの通達上の変化により類推することが主となった。また、当時の担当官との面談調査や、二次資料として金融関係誌での関係者へのインタビュー記事なども活用した。 それらの研究成果は『法律論叢』にて「国際取引における不正な資金移動規制に関する一考察-テロ対策受容における日本の課題-」として公開している。この論考では、約20年の日本のマネーロンダリング対策の経過を追ったのであるが、日本国内において、国際的にはテロを未然に防ぐマネーロンダリング対策と捉えられ国内法の整備が求められている勧告に対しての理解が不足している状況が見て取れた。具体的には、それらは「振り込め詐欺対策」あるいは「暴力団資金対策」とのみ捉えられていたのである。その認識のために、暴力団などの反社会的勢力に資金が還流することと、テロの危険性と関連づけられず、各種の金融対策が不十分に終わっている状況もある。ここには、海外からの指摘を国内慣習に合致しないものとみなす関係者の視角もある。換言すれば、国際的なマネーロンダリングがそうしたセキュリティーホールを突くとの危機感が関係者の中でも希薄なのである。 日本におけるテロ対策としての金融関連施策、およびその影響は実際テロ対策として立案され、実行されていながらも、その認識が金融関係者や市民レベルで共有されておらず、その負担の対価をテロを回避することでの安全と捉えていない点が挙げられる。 上掲の成果をまとめたことで、当初、初年度の研究の目的としていた日本の関連国内法の整理、及び課題は整理することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画および研究目的に即して、調査計画を立案し、それに基づき論文をまとめることができたため、研究の達成度は想定していた様に進んでいると考えている。確かに、実際に調査を行った際、予想以上に金融関係者からの聞き取りが秘密保護や個人情報の関係などから十分に行うことができず、顧客に対する調査を行っていないことなどが分かった。しかし、それらは周辺状況や文献資料等により補完することができた。 また、それ以降の海外での調査の困難度を確認するため、比較対象地である韓国やアメリカにも足を運び、予め状況を追いながら調査を進めていることを追記しておきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
全体の枠組みとしては、日本、韓国、アメリカ三ヶ国のテロ資金供与防止に関わる国内法の整備、及び大手銀行、監督省庁での調査を行うことが主たる研究活動となる。加えて、初年度における日本の状況を踏まえ、関係誌あるいは関係者への面談調査を適宜行うこととする。 推進方法には当初と大きな変化は無い。ただし、2013年度に発表した「国際取引における不正な資金移動規制に関する一考察-テロ対策受容における日本の課題-」にて日本の課題が明らかになったことから、同様の問題点(国際機関からの勧告に対する関係者と一般市民の認知の濃淡)が比較調査地である韓国やアメリカでも発生しているのかという点を分析を進める上での追加視角としたい。もちろん、今後の調査で新たな視角を見出すことができたならば、日本での追加調査も随時行っていく。 また、申請の際の計画書に記した具体的な取引の比較調査に関しては、当初は単年度ごとに三ヶ国間での不動産取引の実態調査を行うことを予定していたが、三ヶ国の状況が十分に理解できた最終年度に最終論考をまとめる中で行う様、予定を変更した。これは国際取引を行う上で、各国の制度上の変化の過程を熟知すること無しに、単に取引の事実だけを調査しても、今回の研究課題を十分に分析することが不十分なものに終わると考えたためである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を進行する中で、初年度に予定していたパソコンの購入ができず(当初は18万円の設定で申請していた)、次年度に購入を持ち越したことが主たる理由である。 次年度の全体の使用計画としては、韓国へ夏季休暇および春季休暇を利用して渡航し、調査資料の収集や面談調査を行う。そして、年度半ばと年度末に論文の依頼原稿の執筆が決定しているため、それらを成果発表の機会と捉え、先行研究整理のための書籍購入、情報の効率的な整理のためのパソコン購入、アルバイト活用などを予定している。
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Research Products
(3 results)