2014 Fiscal Year Research-status Report
テロ資金供与防止条約による国際取引への影響-日韓米三国間の金融手続を事例に
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25780032
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
金 惠京 明治大学, 法学部, 助教 (30638169)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | テロリズム / 国際法 / 国内法 / マネーロンダリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究課題に挙げた三ヶ国の中で、韓国における検証を行った。その中で、韓国の金融関連法制が1990年代までの日本を模倣するものから、OECDのマネーロンダリングに関する金融活動作業部会であるFATFによる「マネーロンダリング防止非協調国家」指定に伴う信用低下の懸念を受けて、2000年を境に国際的な情勢に合致するものへと変化したことを明らかにした。その変化は、日本が2014年にFATFから勧告への対処が不十分との指摘を受けたものの、韓国はそれに該当しなかったことからも明らかである。また、韓国の金融施策の課題として、政治家の汚職が課題となることも、日本との比較の中で明らかになった。それらの成果は、金惠京「韓国におけるマネーロンダリング関連法の特性」『法律論叢』第87巻4・5合併号、2015.として公開した。 また、本年度はForum for International Criminal and Humanitarian Lawにも入会し国際刑事法の国内法制化における課題を日本の共謀罪導入を軸として分析する依頼論文“Considering International Criminal Law Issues in the Fight Against Terrorism”を作成、提出した(2015年12月刊行予定)。同論文では、日本における共謀罪導入を巡り、国際法学者と弁護士会との間で法の位置づけに関わる論争が見られた点や、日韓が同じ法体系を有し、条文自体は同様の内容であったとしても、国内法の基本理念がどのように形成されたのかによって条約締結への姿勢が異なる点を明らかにした。具体的には、日本は日本国憲法作成時に過去の政体との決別が目指され通信傍受に対して厳格な姿勢を示すのに対して、韓国は建国の際に北朝鮮との国家分断が起き、国論統一や同国による破壊活動の未然防止のために通信傍受に対して寛容な姿勢が取られることが共謀罪についての姿勢に影響していると指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までの所、当初予定していた1年に1つの研究成果を発表するという目標は達しており、本年度はそれに加えてテロ法制に関わる日韓の国内法比較に基づいた英語論文の執筆も行うことができた。そのため、区分を当初の計画以上とした。ただし、厳格に金融活動の法的課題を検証するという研究課題のみの進捗具合としては、「順調に進展している」との評価になると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はアメリカを対象として、現状分析を行う。本年度は本務校の移動もあったため、2014年度末の2-3月に既にアメリカでの調査を終えている。その中で、アメリカのテロ法制の実務家との学術交流を持つことができた。距離的に頻繁に往復することは叶わないが、その関係者を通じて、随時アメリカのテロ法制の動向を追っていく。また、ワシントンDCでの調査では、銀行関係者とも交流を深めることができた。土地柄、アメリカ政府との関連が深いため、金融機関の側からの情報も随時得ることが可能となった。 上記の成果、ならびに過去2年の日本と韓国に関する論文執筆を踏まえ、アメリカの状況も年度内には整理し、刊行することを予定している。
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Causes of Carryover |
韓国における書籍購入費が予想より少なく、次年度に持ち越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
アメリカにおけるテロと金融に関する学術書の購入費用に充てる。
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