2014 Fiscal Year Research-status Report
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25780070
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
飯田 秀総 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (80436500)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 会社法 / 企業買収 / 取締役の義務 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、企業買収の対象となった会社の取締役の義務(すなわち、取締役はどのように行為すべきかという規範)について研究した。特にアメリカにおけるこの問題についての理論を手がかりに、日本法の問題としてどのように考えるべきかを明らかにした。アメリカでは、一定の類型の企業買収については、対象会社の取締役は買収価格が合理的に入手可能な最善の価格となるようにするべき義務を負っており、この義務をめぐって学説は大いに対立している。その学説を分析していった結果、日本でも、取締役は、企業買収を受け入れることがその会社の長期的な利益(企業価値)を促進することになるかどうかをまずは考えるべきであり、企業価値の向上につながる場合には、株主が受け取る対価が公正であるように確保するべきであるという結論に至った。 この問題は、最近いくつかの裁判で直接的に問題になってきているものである。理論的には従来から問題となっていたが、必ずしも理論的な解明が十分になされてきていたわけではなかった。本研究で示した解釈論は、学界および裁判実務に一石を投じるものとなることが期待される。 また、この問題は、平成26年に改正された会社法に導入された、特別支配株主の株式等売渡請求(90%以上の株式を保有する株主は、その他の少数株主に対して、自分にその株式を売却するように請求できるという制度)においても、対象会社の取締役は何をすべきか、どのように行動すべきかを考えるに当たって重要である。この制度においては、対象会社の取締役がこれを承認しなければいけないという制度になっている。そのため、特別支配株主による株式等売渡請求の対価の適切性について、取締役会が検討して、適切であると認めたときにのみ承認すべきことが制度上予定されている。本研究の成果はこの新しい制度についても、そのまま応用することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究の成果は、取締役の義務の内容を日本でどのように設計すべきかという点にまで及ぶものであり、当初の予定よりも速いペースで研究成果が得られている。もっとも、その義務の内容を実現するための方策については、今後の課題であり、最終年度につめて研究する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた研究成果を発展させるために、具体的に取締役の義務を実現するための方策を研究する。その際には、アメリカやイギリスとの比較法的検討や、法と経済学的なアプローチをとることを予定している。
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Causes of Carryover |
2000円程度の端数が出たため、次年度に使用したほうがより効率的な執行が可能となるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
書籍の購入に利用する。
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Research Products
(2 results)