2013 Fiscal Year Research-status Report
公務労使関係制度の制度設計と「全体の奉仕者」概念の再構築
Project/Area Number |
25780094
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
出雲 明子 東海大学, 政治経済学部, 准教授 (10510076)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 自律的労使関係制度 / 公務労働基本権 / 全体の奉仕者 / 人的資源管理 |
Research Abstract |
公務員は「全体の奉仕者」たることを理由として、政治的中立性や労働基本権が制限されてきた。「全体の奉仕者」概念は公務員が労働者たることを否定し、特殊な立場にある者としてみる。しかし、スト権の保障などにより公務員を「労働者」とみる動きも出てきている。日本でも、基本権の保障にまでは至らないものの、公務員も労働者であるとする見方が強まっており、そうした対立を踏まえて、公務員が「全体の奉仕者」たることの変化を分析しようとするのが本研究である。近年は、「労働者」の傾向が強まってきていたが、アメリカでは公務員の労働基本権をさらに制限しようとする逆の動きもある。日本では、公務への民間参入が進み、公務員に限定される職務領域は減少している。 今年度は、上記の労働基本権制約に関するアメリカの事例について文献調査を進めるともとに、アメリカ行政学会(ASPA)に参加し、近年の人事管理の変化事例に関して、報告者との質疑応答を行った。あわせてピッツバーグ市を訪問し、労働関係の変化に関する聞き取りを行った。アメリカ公務員に関する文献調査では、「主権概念」の成立により労働基本権が制約されたものの、1960年代以降再検証が進められていることを把握した。スト権を保障するのではなく、仲裁手続きの充実が図られた。しかし、デトロイト市の破たんが示すように、アメリカ自治体での歳出見直しは急務である。2010年にはウィスコンシン州で、人件費削減案として労働基本権を制約する法律が制定され、周辺の州に波及した。アメリカ行政学会では、人件費削減と同時に、公務員のモティベーションを給与以外の方法で高める研究の進展が顕著であり、ピッツバーグ市でも人件費削減案が議論されていた。本研究は、アメリカ自治体での公務員の権利制限を、財政再建が強調されている中にあっても「労働者」とは対極の動きとして理解し、日本との関連を調べていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のアメリカでの公務員労働基本権、人件費削減案を中心に文献調査を実施した。インタビュー調査は1市にとどまったが、学会に参加し積極的に政府、自治体関係者と意見交換、情報交換をしたことで、文献調査以上の実態把握をすることができた。したがって、おおむね順調に推移していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度は、予定通りアメリカ公務員の労働基本権等に関する文献調査、実態調査を進めた。2014年度は、アメリカに関するさらなる事例調査や、人件費削減策の中での公務員概念の変化を調査しつつ、日本の文献調査(主に判例での扱い)、現地調査を進める。 課題は、対象となる中央労働委員会の選定と、公務員に関する判例の選定をどのように進めるかであり、事前に各労働委員会の年報等で情報を把握し、判例も幅広く確認していくことである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
図書(英書)の購入が、表記の金額より円高等の関係で若干安く納品されたため。 今年度も同様に英書を購入するため、その予算に含んで使用する。図書の選定を早期に行い、差額が生じないようにする。
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