2014 Fiscal Year Research-status Report
冷戦終焉の構想―1970年代後半の西欧諸国とデタント
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25780119
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
山本 健 西南学院大学, 法学部, 准教授 (70509877)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | デタント / NATO / 軍縮 / 冷戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、二本の論文の草稿を執筆した(どちらも27年度に論文集の中で出版予定)。一つは、冷戦の分断国家である東西ドイツと南北朝鮮のそれぞれの接近過程を比較検討した。冷戦の終焉を理解する上で、分断国家の関係を理解することは重要である。とりわけ1970年代に東西ドイツは、ブラント西独首相のイニシアティブ、いわゆる東方政策によって東西両国間で「基本条約」が締結された。他方、南北朝鮮は、同じく1970年代に初めて両国間で共同声明を打ち出すものの、韓国が「二つのコリア」による安定を目指す一方で、北朝鮮が統一された「一つのコリア」や駐留米軍の撤退に固執し、南北関係は再び悪化することとなった。このドイツと朝鮮半島の差異を、国際環境(大国間との関係や国連との関係)の文脈の中で浮き彫りにした。 また、1970年代から80年代初頭にかけての東西貿易に関して、特にソ連から西ヨーロッパへのパイプラインを通じた天然ガスの輸出問題を史料に基づき分析し、草稿をまとめた。1970年代に、東西間の緊張緩和の一環として東西貿易が促進され、また石油危機の影響もあり、西ヨーロッパ諸国はソ連から天然ガスの輸入を計画するようになった。しかし、アメリカから見ると、それはソ連へのエネルギー依存を意味し、冷戦の安全保障上の問題とされた。そこに、米欧間で利害対立が生まれることとなった。1980年代初頭にはアメリカによる経済制裁の発動にまで至るものの、同盟内の交渉により危機が回避される過程を明らかにした。 研究の史料調査に関しては、本年度はドイツの外務省外交史料館へ赴き、史料収集をおこなった。そこでは、1970年代後半にフランスより提案された軍縮問題に関する史料を収集できた。また当時のEC諸国が政治協力の枠組みを改革しようとした試みに関する史料も入手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度、イギリスおよびフランスの史料を収集し、今年度はドイツの史料も収集できたことから、史料収集は着実に進んでいる。しかしながら、史料の量が膨大であることもあり、その読解が十分なペースで進んでおらず、研究報告として形になるまで時間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、集めた史料を読み進めることが重要である。また次年度は、アメリカの史料を収集し、NATOの主要国の動向を全体として把握できるよう試みる予定である。
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