2014 Fiscal Year Research-status Report
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25780261
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
宇山 通 九州産業大学, 経営学部, 准教授 (50584041)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自動車産業 / 部品共通化 / 新興国市場 / 設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
1990年代中頃、いわゆるバブル崩壊以降の縮小・停滞する市場下において、トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタと略記)は、部品共通化によるコスト削減を競争上の1つの課題とした。すなわち当時の部品共通化は、市場縮小・停滞へ対応するための手段であった。ところが2012年以降、海外市場において販売が順調に拡大しているにもかかわらず、より幅広い車種への部品の共通化が、トヨタの主要課題の1つにあがっている。市場が縮小・停滞していないにもかかわらず、従来以上の部品共通化が今日課題となるのはなぜか。 以上の問題関心から、2014年度における研究では、トヨタにおける部品共通化の今日的役割を示した。そのために同社の競争上の課題を通時的に分析した。なぜなら部品共通化の役割は競争によって定まり、競争は時期により異なる様相を呈するからである。 結論は次の通りである。2002年前後から2008年世界金融危機まで、トヨタは急拡大する海外市場への対応として、矢継ぎ早に新車を投入した。その結果第1に、共通化すべき部品も共通化できない設計がなされ、その意味で不要なコストが発生していた。これは世界金融危機後プレゼンスを増したアジア市場におけるコスト競争力の低下により、解消すべき課題となった。 第2に新車投入速度重視のため品質に関するリソースが不足した。2009~2010年の1000万台を超えるリコール・自主回収により、このリソース不足の解消が大きな課題となった。 そして第3に次々と新車が投入されることで、新規部品が増大し、部品管理が複雑化した。2011年の東日本大震災により、サプライチェーンが長期寸断されたことから、その復旧速度向上のために、複雑化した部品管理を容易化することが課題となった。 以上3つの課題へ同時にアプローチする1手法が、より広範な部品共通化であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2013年度の研究において課題としていた1つの問題を2014年度に解消した。その点で研究は進展しているといえる。ただしサプライヤ側の動向に関して、2013年度の終わりにおいても研究課題としていたが、それは2014年度が終わった現時点においても研究しきれていないからである。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」で述べた通り、新興国市場(とりわけアジア市場)の急激なプレゼンスの高まりは、トヨタに設計方法の転換を迫った。同社は従来よりも広範な部品共通化を可能とする設計方法を採用した。 しかしその設計が十分に機能するのか否かは、サプライヤ側の動向を考察せずには十分に論ずることができない。(サプライヤ側からみて)顧客企業たるトヨタの要望の急激な転換に、サプライヤ側がいかなる対応をみせるのか。 2015年度は部品共通化に関するサプライヤ側の動向を考察していく。
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Causes of Carryover |
「研究実績の概要」で述べた通り、2014年度論文自体で取り上げた企業はトヨタ1社である。計画では複数のサプライヤを取り上げる予定であった。そのためのインタビュー調査等に要する旅費が残った。これが理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は2014年度にやり残した複数のサプライヤ調査を実施する予定である。具体的には「TNGA推進賞」受賞企業への調査である。2014年度はこの受賞企業のうち1社のみインタビューを実施しており、残りの企業へインタビュー調査を依頼する。
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Research Products
(2 results)