2015 Fiscal Year Research-status Report
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25780261
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
宇山 通 九州産業大学, 経営学部, 准教授 (50584041)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自動車部品 / 標準化 / 固定費 |
Outline of Annual Research Achievements |
製品標準化にはコスト競争上の利点があるにもかかわらず、日本自動車部品企業は標準化へ常に積極的であったわけではない。同企業の標準化への姿勢は時期により大きく異なっている。標準化の背景と成果について時間を遡って考察することは、標準化へと至るプロセスにパターンを見出す上で重要である。 この問題関心から日本自動車部品企業における標準化の変遷を考察した。同部品標準化に向けた取り組みは、1956年から本格化し、1990年代に大きく進展した。よって1956年から1990年代までを考察範囲とした。議論の焦点は、日本自動車部品企業が標準化を必要とした背景、その実現に向け使用できた手段、逆に目標達成を抑制した障害に当てた。 考察結果は以下の通りである。日本自動車部品企業で標準化が強く求められたのは、自動車の生産総量が少なく、個別企業レベルでの標準化ではスケールメリットが得られなかったとき(Ⅰ期:1956年~1960年代中頃)、また固定費負担が企業経営を逼迫させるほどに高まったときであった(Ⅳ期:バブル崩壊後~1990年代末)。逆に標準化の必要性が著しく低下したのは、固定費を増してもなお利益が急速に伸びたときであった(Ⅱ期:1960年代後半から1970年代末)。標準化の必要性がⅣ期より低いが、Ⅱ期よりは高かったのは、利益は伸びていたものの、固定費負担がそれを上回ったときであった(Ⅲ期:1980年代~1990年代初頭)。すなわち1956年から1990年代末にかけて、日本自動車部品企業の抱えていた諸課題における固定費問題の重要度が、標準化の進展に極めて強く影響していたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度における本欄では次のように記載した。平成26年度の研究では、自動車企業を視点に、自動車部品共通化の新展開に関し考察した。しかし同共通化には自動車企業だけでなく、自動車部品企業も関与している。そして自動車部品企業はその意識決定において、一面では自動車企業からの制約を受けるが、他面では主体的に、自由に、行動が策定される。ゆえに自動車部品企業の視点からも自動車部品共通化を考察する必要があり、それが平成27年度の課題であるとした。 この課題に対し、平成27年度の研究では、【研究実績の概要】欄で示した通り、自動車部品企業を視点とした考察を行った。この点で研究は進んだといえる。しかし、同欄に記載の通り、年代、地域ともに大きく限定を加えた研究であった。それゆえ上記「区分」でいえば、(1)よりも(2)が妥当であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
上記【現在までの進捗状況】欄に記載した通り、平成27年度の研究は地域に関し大きな限定を加えている。そこで標準化に関する地域差を考慮した考察を平成28年度の研究において加えたい。たとえば1960年代,1970年代,日本自動車部品企業には欧州自動車部品企業が顧客の多様化要望に応えず,標準化された自動車部品の供給に成功しているようにみえていた。欧州自動車部品企業が顧客の要望を退けてまで標準品を提案できた各種要因に関し考察することは,日本自動車部品企業による標準化へのパターンを相対化させる上で重要であろう。
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Causes of Carryover |
日本自動車部品企業における自動車部品標準化への取り組みに関し調査を続ける中で、2000年以降のそのパターンを把握する前に、同標準化が本格化した1990年代までのそれを明らかにする必要が生じた。なぜなら日本自動車部品企業による2000年以降の標準化への取り組みに特徴を見出すためには、同企業がそれ以前に確立した標準化への取り組みとの比較が必要となるからである。 そして1990年代までを対象とした場合、企業へのヒアリング調査よりも、文献調査が多くなる。それゆえ旅費が計画よりも少なくなった。また、対象が日本の自動車部品企業であったため、書籍代、文献複写料等も低く抑えられた。これらが【次年度使用額が生じた理由】である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
【今後の研究の推進方策 等】欄に記載の通り、欧州自動車部品企業における自動車部品標準化に関する取り組みが、平成28年度における主たる課題である。それゆえ旅費、書籍代、文献複写料等も計画より高くなると考えられる。そこに発生した次年度使用額をあてることが、【使用計画】である。
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Research Products
(4 results)