2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25780368
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
川上 直秋 筑波大学, 人間系, 特任助教 (80633289)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 単純接触効果 / 無意識 / 潜在認知 / 閾下 / サブリミナル |
Research Abstract |
平成25年度は2つの実験研究を行い,意識的な情報接触と無意識的な情報接触による影響の違いについて検討した。 まず実験1では,単純接触効果における閾上呈示と閾下呈示の強度の比較を行った。具体的には,同一実験参加者内で閾上と閾下で刺激を同時に呈示し(入力過程),どちらの刺激入力の方が効果が大きいかを比較した。また,その効果測定(出力過程)には従来の自己報告による顕在指標と,GNATとIATという潜在指標を用いることで,多面的な測定を試みた。その結果,刺激を閾上呈示した場合には,顕在指標と潜在指標の両方で単純接触効果が生じた。しかし,閾下呈示の場合には潜在指標のみの効果に留まった。加えて,両呈示の効果を比較したところ,顕在指標においては閾上呈示の方が効果が強いものの,潜在指標では両者に差はなかった。すなわち,無意識的な反応を測定する潜在指標については同程度,意識的な反応を測定する顕在指標については閾上での意識的な入力の方が強いことが明らかとなった。 さらに,実験2ではこの知見を発展させ,意識的な処理と無意識的な処理の関係を探るため,閾上と閾下で同一人物の矛盾した表情を呈示することによって,意識と無意識による情報が競合する状況を作り出した。結果,潜在指標では,閾下呈示された表情に基づいた印象が形成されたのに対して,顕在指標では閾上呈示された表情に則した印象が形成された。つまり,閾上と閾下で入力される情報が競合する極端な状況下においては,意識と無意識は比較的独立したシステムとして機能し,入力過程の意識性に応じた反応が出力過程で優先的に現れることが示唆された。 以上の検討により,刺激の入力から反応の出力に至る認知過程について,それぞれの意識性を想定することによって,多層的な枠組みの中で意識と無意識の処理過程を統合的に理解することに繋がるものと考えられる
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
情報への接触について,意識的な接触と無意識的な接触を区別し,その影響を実験的方法により検討し,基礎的で重要な知見を得ることができた。これらの知見は,膨大な量の情報に曝され続ける現代社会において,それらの情報がどのような認知過程を経ながら影響を与えているのか,その諸相について優れた洞察を示すものであると捉えられる。したがって,25年度の研究目的である,個人内における意識と無意識の影響過程の違いを詳細に分析するという目標を達成すると同時に,新たな研究課題も生まれ,今後の展開へとつながるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度の実績により方法論が確立されたため,大きな変更はなく今後の研究を推進する。ただし,26年度の実施計画では,25年度の基礎的な知見を踏まえた上で,より日常的な場面を想定したインターネット場面実験を行う予定である。そのため,実際に実験に用いる素材などの選定に当たっては,倫理的な問題にも配慮しつつ慎重に進める必要がある。加えて,このようなインターネット場面を用いた実験は,世界的にも例が少なく探索的な形となるため,望む結果が得られない場合や実験状況の設定が難しい場合には,研究内容に若干の修正を加えるなど柔軟に対応する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
極めて少額の残金であり,適切な使途がなかったため。 翌年度分として請求した助成金と合わせ,主に物品費として使用する。
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