2014 Fiscal Year Research-status Report
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25780368
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
川上 直秋 筑波大学, 人間系, 特任助教 (80633289)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 無意識 / 潜在認知 / 閾下 / サブリミナル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,平成25年度の研究成果で得られた基礎的な知見を,日常的な場面を想定した状況へと展開した2つの実験研究を行った。 一つ目の実験では,日常的に接触する文字の形態的側面が説得的メッセージに及ぼす影響を検討した。具体的には,まず接触フェイズにて複数の手書き文字列を実験参加者へ呈示した。その後の評定フェイズでは,予備調査から中立的な内容として選定された2つのメッセージ(親近性高・親近性低メッセージ)を示し,そのメッセージへの納得度と賛否度を測定した。その結果,親近性の高いメッセージに限って,評定の前に接触した筆跡と同じ筆跡で書かれた場合の方が,より説得的効果が強いことが明らかとなった。ただし,実験参加者は,メッセージがその前に接触した手書き文字と同じ筆跡であることに気づいておらず,この効果は無意識的なものであることが示された。すなわち,インターネットなどで日常的に接触する文字情報については,その形態的な側面の影響を無意識的に受けることが示唆される。 二つ目の実験では,インターネットの掲示板など,匿名的な状況で散見される攻撃的な情報への接触の影響を検討した。具体的には,死を連想させる単語を閾下呈示し,その影響を測定した。その結果,死関連語と自己関連語が結びついた場合,握力の増大という身体反応に影響が現れることが明らかとなった。すなわち,インターネット上などで,攻撃的な内容の情報に無意識的に接触することは,認知的な影響だけではなく,身体反応というより直接的な社会的影響を持つ可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの意識と無意識の情報接触に関わる基礎的な研究成果を踏まえ,より日常的な場面を想定した検討を行い,重要な知見を得ることができた。これらの知見は,インターネットなどで日常的に膨大かつ様々な種類の情報に曝され続ける現代社会において,それらの情報がどのような影響を我々に与えるのか,その諸相について優れた洞察を示すものであると捉えられる。したがって,26年度の研究目的である,現代社会に特有の情報接触(特にインターネット)による影響の探索的検討という目標を達成すると同時に,新たな着想を得るなど,今後の展開へとつながるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度には,インターネット調査を通した意識的・無意識的な攻撃的情報への接触の影響を検討する計画をしていた。しかし,平成25年度・26年度の検討から,情報接触の影響は極めて繊細なものであり,その影響を厳密に捉えるためには統制された環境内での検討が不可欠であることがわかった。そのため,インターネットでの調査においては,情報接触の頻度や内容を統制することは極めて困難であり,多くのバイアスが混入することが予測されるため,インターネット上の調査研究ではなく,インターネット上での情報接触を想定した実験室実験へと変更する必要がある。そのため,インターネットという環境の本質的な部分,すなわち大量の情報への受動的接触や攻撃的な情報内容等を押さえた上で,それらを統制された実験環境に置き換え,意識的・無意識的な情報接触が持つ日常的な影響を検討することで,本研究課題の目的を達成するよう対応する。
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Causes of Carryover |
少額の残金であり,適切な使途がなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度分として請求した助成金と合わせ,研究計画遂行のための物品費として主に使用する。
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