2014 Fiscal Year Research-status Report
物理的温度が自己と他者の認知に影響する過程の実験的検討
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25780375
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
大江 朋子 帝京大学, 文学部, 准教授 (30422372)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 社会的認知 / 自己 / 他者 / 身体性 / 温度 / 感覚 / 対人判断 / 実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
身体を通して感じとる物理的な温かさの知覚は,対人的な判断にまで影響することが知られている。ただし,その影響は,身体の温度変化を生じさせる原因が外界にあると知覚されるか,自分自身にあると知覚されるかによって異なる可能性がある。平成26年度には,身体の温度変化を生じさせる原因が自己と外界のいずれにあるかの知覚(以下,温度変化の原因の知覚)を操作し,この知覚が物理的温度の効果を調整する要因となるかを調べるための実験を行った。主要な結果は次の通りである。 1. 実験参加者の身体の温度を局所的に上昇させた実験では,(1)身体温度が上昇していると教示された参加者は,実際に参加者の身体温度が上昇するほど,自己の人柄(i.e., 対人的な温かさ)を高く評定したが,触れている物の温度が上昇していると教示された参加者は,実際に参加者の身体温度が上昇するほど,自己の人柄を低く評定した。(2)これとは逆の結果が他者評定の一部において確認され,身体温度が上昇していると教示された参加者は,参加者の身体温度が上昇するほど,対象人物の人柄を低く評定し,触れている物の温度が上昇していると教示された参加者は,参加者の身体温度が上昇するほど,同じ対象人物の人柄を高く評定する傾向にあった。 2. 温度変化の原因の知覚を1と同様の教示を用いて操作し,潜在連合テストを用いて自己と他者の潜在的な認知を測定した実験では,(1)身体温度が上昇していると教示された参加者は,外界の温度が上昇していると教示された参加者よりも,自己と温かさの潜在的連合が強いことが示された。 以上の結果は,(1)温度変化の原因の知覚という主観的な要因によって物理的温度の効果が調整されること,(2)物理的温度の効果が自己と他者を対比させるかたちで生じること,(3)顕在的な水準だけでなく潜在的な水準でこれらの効果が生じることを示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
温度変化の原因の知覚を操作することに成功し,申請書に記載した通り,顕在的な水準だけでなく潜在的な水準においても実験結果を確認することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
物理的な温度が自己ならびに他者の認知に影響する過程は,温度変化の原因の知覚だけでなく,他者との関係性によっても異なると考えられる。前年度までに行った研究の結果からも,評定対象とした他者のなかには,物理的な温度の効果が生じやすい対象とそうでない対象があることが部分的に確認されている。 今後は,自己と他者との関係性の知覚を考慮したうえで,物理的な温度が自己と他者の認知に影響する過程を検討する調査ならびに実験を行い,自己と他者を区別し特徴づける社会的認知基盤の包括的な理解を目指していく。
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Causes of Carryover |
平成26年度のうちに完了させる予定であったデータ整理の作業が遅れ,作業のための人件費・謝金に次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に完了しなかったデータ整理の作業を,次年度に継続して実施する。
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Research Products
(5 results)