2014 Fiscal Year Research-status Report
抑うつの持続過程のマクロな理解:反すうを中心として
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25780430
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Research Institution | Tokai Gakuin University |
Principal Investigator |
長谷川 晃 東海学院大学, 人間関係学部, 准教授 (00612029)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 抑うつ / 反すう / 社会的問題解決 / うつ病 / 認知行動療法 / 臨床心理学 / 感情心理学 / 異常心理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、反すうと社会的問題解決の関連を検討した昨年度の研究の発展的研究を行った。大学生223名に、反すうを測定するRuminative Responses Scale(RRS)、社会的問題解決方略の有効性を測定するMeans-Ends Problem-Solving Test(MEPS)、社会的問題解決の5次元を測定するSocial Problem-Solving Inventory-Revised Short Version(SPSI-R:S)等の指標に回答を求めた。なお、MEPSを実施する際、半分の参加者には昨年度と同様に、自分自身がその問題状況に遭遇した際に本人が実際に行う方略(通常の方略)を回答させ、残りの参加者には理想的な方略を回答させた。その結果、どちらの条件でも、RRSの全ての得点とMEPSの得点に関連が認められなかった。一方、RRSの合計得点や考え込みはSPSI-R:Sで測定されるネガティブな問題志向や回避型スタイルと正の相関が認められた。また、反省はポジティブな問題志向と正の相関が見られ、考え込みよりも合理的な問題解決との相関が強かった。以上の結果や先行研究で得られた知見を踏まえると、①健常群では、状態的な反すうはMEPSで測定される社会的問題解決方略の有効性の減少を導くが、特性的な反すうは社会的問題解決方略の有効性と関連がない、②反すうやその一要素である考え込みは、嫌悪的な環境や感情を回避するという目標を達成するための認知行動的反応の一部である、③反省は積極的な問題解決過程の一部である、ということが示唆された。反すうが健常者の抑うつを悪化させることが多くの研究で明らかにされているが、そのメカニズムについては十分に明らかにされていない。本研究では、反すうが問題状況に対する消極的な態度や回避的な行動パターンとの相互作用を通して抑うつを強めることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画から若干変更し、本年度は昨年度行った研究の追試に重きを置いた計画を立てた。研究の結果、昨年度の探索的な研究で得られた知見が再現され、また、理論と整合しなかった疑問点が解決された。そのため、抑うつや反すうの持続過程の理解という研究プロジェクト全体の目的の達成に向け、着実に前進できたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度には、過去2年間に得られた知見を踏まえた上で、それらを発展させるための研究を行う。具体的には、ここまでの研究では反すうと社会的問題解決の各側面を一時点で測定し、関連を検討したが、2016年度には縦断的な研究を行うことで、その因果関係を検討する。それに加え、過去2年間の研究において、反すうと回避的な問題解決スタイルの相互作用は、抑うつ研究で取り上げられる重要な変数である衝動性と独立していることが示唆された。そのため、衝動性を測定する指標も取り上げ、その検討も行う。
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Causes of Carryover |
当初の予定より郵送料金といった「その他」の細目での支出が少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度には研究参加者への謝礼、追跡調査を行う際の封筒や郵送料金、学会参加の際の旅費、および図書費等で助成金を使用予定である。
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