2015 Fiscal Year Annual Research Report
公教育としてのオルタナティブな教育機関の制度的条件に関する日米比較研究
Project/Area Number |
25780480
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
後藤 武俊 東北大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (50451498)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 不登校 / 教育課程特例校 / ネットワーク / 境界連結者 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、主に二つの研究に取り組んだ。第一に、自治体とフリースクール等の民間団体との協働における組織間ネットワークの形成過程に関して、福岡市を事例に組織間関係論の観点から分析を行った。福岡市は、「不登校よりそいネット」という官民合同のネットワーク組織を軸に様々な事業を展開しており、両者の協働が実現している数少ない事例の一つである。分析の結果、同市では、「不登校よりそいネット」の構築にあたり、不登校児童生徒を直接のターゲットとするのではなく、その保護者への支援に焦点を当てたことで、家庭教育を管轄する生涯学習系の部局が行政側の窓口となり、民間団体側と容易に連携を取ることができたこと、そして、この両者の結節点で、以前から生涯学習系部局の事業で不登校に関連する講座等を担当してきた人物が、情報プロセッシング機能や組織間調整機能、象徴的機能を果たすことで境界連結者の役割を果たしていたことなどを明らかにした。本研究の成果は、2015年11月の日本教育制度学会第23回大会にて発表された。 第二に、地方自治体における不登校児童生徒へのサポート体制の現状と課題について、特に不登校児童生徒を対象とする教育課程特例校を設置している自治体を事例として分析を行った。分析の結果、当該特例校を設置する自治体では、いずれも多様な機関や機能を準備し、総体として不登校児童生徒に対する支援の「網の目」を形成していることを明らかにした。また、それ以外にも、不登校児童生徒に関する相談窓口や情報共有の拠点の一元化、特例校における体験活動および自己肯定感・他者理解促進プログラムの実施、異年齢集団における学び合いの重視といった点で共通点が見られることを明らかにした。本研究の成果は、2016年6月刊行予定の『東北大学大学院教育学研究科年報』第64集第2号に掲載予定である。
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