2013 Fiscal Year Research-status Report
極高エネルギーアンクル領域の宇宙線強度非等方性の研究
Project/Area Number |
25800128
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川田 和正 東京大学, 宇宙線研究所, 特任助教 (10401291)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 宇宙線 / 極高エネルギー / 異方性 |
Research Abstract |
テレスコープアレイ(TA) は10の18乗電子ボルト(=1EeV) 以上の極高エネルギー宇宙線(UHECR)の起源を解明するため、米国ユタ州の砂漠地帯に設置され、2008年に本格的に観測を開始した。TAの地表アレイは北半球最大の観測面積 (700キロ平米) を持つが、UHECRの頻度が極端に少ないため、このような巨大装置でも大きな統計量の解析は容易でない。 当該年度は、主に地表アレイで得られた0.5EeV以上の空気シャワー(宇宙線が大気との衝突で発生する粒子のシャワー)データの解析方法の最適化を行い、宇宙線強度の非等方性の探索を行った。解析条件の緩和と最適化の結果、解析可能な宇宙線のイベント数を約10倍にすることに成功した。また、空気シャワーの構造関数の最適化により、宇宙線の到来方向の決定精度が20%程度向上した。角度分解能は、1EeV以上で約3度である。また、宇宙線エネルギーを推定するための関数の再定義も行った。 以上のデータを用いて、1EeV領域における中性粒子(中性子、ガンマ線)の放射天体の北天探索を行った。約17万イベントの宇宙線を解析した結果、我々の観測する北天領域に有意な信号は観測されなかったので、点源を仮定した中性粒子の放射強度の上限値を計算した。現時点で、この上限値は1EeV領域の点源の北天探査としては最も良いものである。 また、TAでは将来計画として、TALE計画(検出器を密に並べ、低エネルギー側を高感度化)とTAx4計画(検出器を若干粗に並べ、検出面積を4倍に増加)があるが、このための検出器の開発が進んでいる。本年度は、データ取得エレクトロニクスが落雷等により制御不能に陥った際の自動復帰システムの構築とメンテナンスプロセスの簡素化を行った。これらは、将来計画が実現し検出器台数が増加した際に特に重要となるであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究の第一目標は、2008年から取得されている極高エネルギーアンクル領域(1EeV-10EeV)の宇宙線の統計量を劇的に増やし感度を向上させることにある。平成25年度は、空気シャワーのモンテカルロシミュレーションを用いて、低エネルギー側の解析条件の最適化を行った。その結果、1EeV領域で宇宙線の統計量を約10倍にすることに成功した。また、この宇宙線データを用いて、アンクルエネルギー領域の中性粒子(中性子、ガンマ線)放射天体の探索を行った。その結果、有意な信号は得られなかったが、点源を仮定した中性粒子の放射強度の上限値を得た。この上限値は、現時点で北天領域の観測において最も良い上限値である。本研究成果は、2013年に開催された宇宙線国際会議で発表され、論文として収録されている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、1EeV領域での解析可能な宇宙線の統計量を劇的に増やし感度を向上させた。そして、点源を仮定した銀河系内の中性粒子放射天体の探索とAGASA実験が主張した宇宙線の大規模異方性の探索も行った。今後は、これらの結果に基づいて、探索方法の系統誤差を詳細に見積もり、査読付き論文への掲載を目指す。また、今回の解析エネルギー領域は1EeV付近に限ったが、さらに高エネルギー領域においても、本解析方法により統計量の増加が見込まれる。統計量の増加した10EeV以上の宇宙線を解析することで、さらに銀河系外起源についても探索範囲を広げていく。将来計画(TALE計画およびTAx4計画)で用いる検出器の開発も引き続き進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度において、データ取得エレクトロニクスの自動復帰システムの設置を行ったが、時間の都合上予定より少ない台数にしか設置できなかったため。 以上の理由から、次年度に同システムを設置することにし、未使用額はシステムのパーツの購入に充てることにしたい。
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Research Products
(8 results)