2015 Fiscal Year Research-status Report
弦理論、ゲージ重力対応を核とした、物性、原子核、重力理論の未解決問題への挑戦
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25800143
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
飯塚 則裕 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40645462)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲージ重力対応から、漸近的Anti-de-Sitter空間においては量子重力を対応するゲージ理論で非摂動に定義することが可能になる。ここから、漸近的Anti-de-Sitter空間で量子重力理論を直接解くことは可能かと考えるのは自然な問いである。この難問を、我々は3次元(空間2次元+時間1次元)での純粋重力理論(重力以外に自由度がない系)で挑戦し、その分配関数の計算をある仮定の下で量子論的に厳密に行う事に成功した。(理化学研究所の田中氏と京都大学基礎物理学研究所の寺嶋氏との共同研究)。
ここでの鍵となるアイデアは、3次元重力理論が少なくとも古典的には3次元チャーンサイモンズ理論と等価である事、および3次元チャーンサイモンズ理論が量子論的には局所化という手法を用いる事によって厳密に経路積分を行って量子論的に解く事が可能である事である。
得られた分配関数は特殊なセントラルチャージの場合、Wittenが予言したJ関数に一致する事が確かめられ、また一般に、得られた分配関数は、(ゲージ重力対応を仮定して得られる)双対な2次元境界上の場の理論の真空およびプライマリーオペレーターのビラソロ代数のキャラクターとして表す事ができ(イスラエル、Weizmann研究所の本多氏、および田中氏と寺嶋氏との共同研究)ゲージ重力対応の観点からも非自明なレベルでその整合性が見て取れる。これらは厳密な量子重力理論の計算という意味では、現実の4次元の量子重力を理解するための試金石となると考えられる。また、これらの計算手法を3次元でスピンが3以上の場を含む重力理論(高次スピン重力理論)に拡張し、その場合でも分配関数を求める事に成功し、結果、先ほどの純粋量子重力理論同様、双対な境界場の理論のW_N代数のキャラクターとして表されている事を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
3次元重力理論を厳密に計算するということは未解決問題の一つである。ある程度の仮定を前提としているとはいえ、厳密に量子重力理論の分配関数を行う事に成功し、それが他の方法で予想されている計算とある程度の整合性がとれる結果を得るということは、当初の想定以上の研究の進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は3次元より高次元(4次元、5次元)の量子重力問題にとりくむため、対応する場の理論からどのように重力理論を定義して、重力理論が出現してくるのかについてより深く理解できるための研究に取り組む
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Causes of Carryover |
当該年度は直接経費70万に対して、実使用額が約73万とほぼ予定通りの支出であった。なお、次年度使用額が約44万程発生したのは、2013年度に研究代表の所属先が理化学研究所に移り、理化学研究所の補助金(約50万)をいただいたので、その年度の海外の研究会参加にその補助金であてがい、本科研費を2016年度の出張のためにあえて残しておいたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究代表は2016年に今までの研究成果を世界に発信していくために海外出張を例年より多く行う。なお繰り越した次年度使用額約50万と、本年度の科研費は、これらの出張にともなう費用にあてる予定である。
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Research Products
(7 results)