2014 Fiscal Year Research-status Report
格子QCDにおける有限体積効果を1%以下に抑えるためのパイ中間子有効理論の解析
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25800147
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
深谷 英則 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70435676)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 格子QCD / カイラル摂動論 |
Outline of Annual Research Achievements |
Higgs 粒子がCERNの大型ハドロン衝突型加速器(LHC)で発見されたものの、そのふるまいは素粒子標準模型と無矛盾であり、それを超える新しい物理の発見には、より精密な理論計算が必要となっている。特に、強い相互作用を記述する量子色力学の理論計算の役割はますます重要になってきている。本研究は、この量子色力学の数値計算精度を高めるために有限体積効果による系統誤差を可能な限り小さく抑えることを目的とする。本年度はパイ中間子の電磁気形状因子の抽出に必要となる擬スカラー-ベクトル-擬スカラーの3点相関関数について、共同研究者である大阪大学の大学院生鈴木貴志氏とともに、パイ中間子有効理論の解析を進め、空間運動量の挿入および、相関関数の適切な比をとることで有限体積効果の主要部分を相殺できるという前年度の研究成果を論文に発表した。また、その解析結果を用いた格子QCD数値計算に関する論文も発表した。この研究は従来必要と考えられてきた体積より小さい 一辺4fm 程度の格子であっても、物理量を正確に抽出できる可能性を示すものであり、今後の数値計算の精度に期待が持てる結果である。なお、2015年6月にイタリアのピサで行われる国際会議 Chiral Dynamics 2015にて、本研究について発表(招待講演)予定である。 また、もう一つの有限体積効果の原因である、ゲージ場のトポロジーに関する研究でも重要な進展があった。それは、格子の全空間を用いず、部分空間に対象を絞り、かつ全空間のトポロジカルチャージの変遷に対応する全体へのバイアスを引き算することで、有限体積効果を相殺できるという発見である。この手法により、トポロジカルサスセプティビリティーという、従来のやり方では計算の難しい量の正確な抽出に成功した。さらに、この研究からエータプライム中間子の質量の理論計算の成功という副産物もうまれた。現在、両成果について論文の投稿を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初のより多様なハドロンの形状因子への応用は遅れ気味であるが、副産物として、トポロジカルサスセプティビリティー、およびエータプライム中間子の質量の正確な理論計算に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画どおり、重いクォークを含む中間子の有限体積効果に着目し、その正確な理論計算に道筋をつける。当面のターゲットとしては、チャームクォークを含むD中間子の形状因子の計算を行う。
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Causes of Carryover |
当初の計画であった多様なハドロンの形状因子の理論計算の遅れに伴い、予算執行に若干の遅れが生じているため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年6月にイタリアのピサで行われる国際会議Chiral Dynamicsへ招待講演を依頼されたが、旅費はこちらで支出する必要があるため、その旅費として支出予定である。
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