2013 Fiscal Year Research-status Report
K中間子入射反応の精密理論解析によるハイペロン分光とYY間相互作用の研究
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25800149
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鎌野 寛之 大阪大学, 核物理研究センター, 特任助教 (00625361)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ハイペロン / ハドロン共鳴 / チャンネル結合模型 / 部分波解析 / 中間子生成反応 / ストレンジネス / 国際情報交換(米国) |
Research Abstract |
本研究の目的は、反応チャンネル間の動的な結合を適切に考慮した反応模型に基づくK中間子入射反応の精密理論解析を通じ、未だよく分かっていないハイペロン(=ストレンジネス量子数をもつバリオン)の質量スペクトル、内部構造、相互作用などを、多チャンネル反応理論の観点から解明することである。本年度は、主に以下の二点を行った。 1.本研究課題全体の土台となる、K- p反応の動的過程(off-shell過程を含む)を記述するユニタリーな多チャンネル結合模型(動的チャンネル結合模型)の定式化と、動的チャンネル結合模型に基づくK- p反応の包括的な部分波解析を実現する数値解析コードの開発を完了した。 2.ハイペロン共鳴の存在が期待されるエネルギー領域における K- p → Kbar N、πΣ、πΛ、KΞ反応の現存する実験データ(微分断面積、スピン偏極量)を1.で開発したコードを用いて部分波解析することにより、散乱振幅を決定した。複素エネルギー平面への散乱振幅の解析接続を数値的に行い、複素エネルギー平面上での散乱振幅の極として定義される共鳴状態をサーチした。これにより、スピン7/2以下のΛ*およびΣ*共鳴の質量スペクトルや崩壊幅を決定した。 off-shell効果も適切に取り入れる動的な反応模型の枠組みでは、K- p反応の包括的解析を世界で初めて達成した。また、本研究で得られるoff-shellの散乱振幅は、K- p反応を素過程として含む原子核反応などに対して幅広い応用が期待できる。上記の成果については、plenary talkとして招待された国際会議BARYON2013や、Hadron2013のkeynote talkなどで報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した当該年度の研究実施計画の内容を達成し、その成果をまとめた論文の執筆に現在着手している。また、広範囲のエネルギー領域にわたるK- p反応をよく記述する反応模型の構築に成功したので、今後の研究計画内容をスムースに進めていくことができると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画に挙げた次のステップは、重陽子標的反応(K- d反応)を介した K- pのしきい以下のエネルギー領域に存在するΛ*、Σ*共鳴の探索である。このために、重陽子標的反応の専門家である米国の共同研究者と協力し、重陽子標的部分の模型の構築を進める。重陽子標的部分の計算コードについては、一から作るのではなく、共同研究者が以前別の計算のために作ったものを改良する形ですすめ、コードの開発時間を短縮する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度に当初予定していたPCの購入をとりやめたため未使用額が生じたが、次年度にあらためて購入予定である。 現時点で、次年度は海外で開催の国際会議に2回出席を予定している(約200,000円×2回)。また、国内への研究会への参加は4回程度を見込んでいる(約60,000円×4回)。これらの会議・研究会への参加費に加え、図書や出張時にもインターネット回線に接続できるようにデータ通信端末(約50,000円)の購入、ノートPC(約200,000円)の購入などを計画している。
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