2015 Fiscal Year Research-status Report
低エネルギー不安定核ビーム実験用の薄膜偏極陽子標的の開発
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25800155
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
坂口 聡志 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70569566)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 不安定核 / スピン偏極 / 共鳴散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 偏極陽子固体標的の開発:偏極生成装置の最重要要素であるマイクロ波共振器の開発を進めた。平成27年度の試作品の開発で大まかな構造は完成しており、本年度はマイクロ波によって生成される振動磁場強度を増強させるため、共振器の材質を真鍮から電気伝導率の高い銅に変更した。これにより、Q値を500から800程度に向上し、現実的な強度(32W)のマイクロ波の印加によって、陽子偏極生成に必要な振動磁場強度を実現できることを示した。また、共振器の冷却試験を行い、温度に関わらず高いQ値が得られること、共振周波数が安定であることを実証した。これらの結果により、マイクロ波共振器の開発を完了した。
2. 陽子-炭素9共鳴散乱テスト実験:低エネルギー不安定核ビームを用いたテスト実験として、理化学研究所RIPSビームラインにおいて、陽子-炭素9共鳴散乱実験を行い、以下2点の結果を得た。①非束縛核窒素10の核分光のための物理データを取得した。3種類のバックグラウンド(標的中の炭素起源、炭素9のベータ崩壊、非弾性散乱起源)の内、前者2つの除去に成功し、後者の除去を試みている。得られた微分断面積データから、非束縛核窒素10の質量を初めて決定し、平成28年度に投稿論文として発表する。②位置広がりを抑えた低エネルギー(5MeV/u)ビームの生成手法の開発を行った。平成27年に行った検討の結果を受け、楔形ポリエチレン板でエネルギーを減衰させることで、ビーム輸送効率を2倍に向上し、ビーム強度を増大させることに成功した。
3. 陽子-ヘリウム6弾性散乱実験の準備:本研究で完成させた大口径偏極陽子標的を用いた初の不安定核ビーム実験である陽子-ヘリウム6弾性散乱の偏極分解能測定(平成28年6月実施予定)に向けて、偏極標的の安定動作確認、検出器セットアップの設計、真空チェンバー内のヘリウムガス充填機構の開発等の準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、本研究の計画として設定していた、(1)標的の大面積化、(2)マイクロ波共振器の開発、(3)p-タフェニルの薄膜単結晶の作成、を完了し、さらに陽子-炭素9共鳴散乱のテスト実験を遂行し、(4)ビーム広がりを抑えた炭素9ビームの開発手法を確立するとともに、(5)未知である非束縛核「窒素10」の質量を解明するための物理データを取得することに成功した。(6)新たなバックグラウンド除去解析手法を確立し、結果をまとめて平成28年度に投稿論文として発表する。 また、RIビームファクトリーの運転経費の不足で遅れていた(7)陽子-ヘリウム6弾性散乱の偏極分解能測定実験のマシンタイム確保の目処も平成28年度に立ち、大口径偏極標的を含む準備を進めている。(8)標的温度制御系の開発には至っていないが、全体としてはおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年6月に、本研究課題で大面積化を達成した偏極陽子固体標的を用いて、理化学研究所RIビームファクトリーSAMURAIビームラインにおいて、不安定核6Heとの弾性散乱の微分散乱断面積と偏極分解能測定を実施する。得られたデータを解析し、陽子-6He間のスピン軌道相互作用に関する情報を引き出し、これを安定核の系統性と比較する。結果をまとめ、発表する。当初の計画ではこの実験は平成27年度までに行われる予定であったが、理化学研究所RIビームファクトリーの運転経費の問題のためマシンタイムが確保できず、平成28年度に行うこととしたものである。
また、平成27年度に行った陽子-炭素9共鳴散乱実験において得られたデータから、非弾性散乱によるバックグラウンドを除去し、未知である窒素10の質量を初めて決定し、投稿論文として発表する。
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Causes of Carryover |
平成28年度の6月に、理化学研究所RIビームファクトリーにおいて、陽子-6He弾性散乱実験のマシンタイムを獲得できる見込みとなったため、年度始めの出張等の準備に充てるために次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
通常の助成金と同様に使用する。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Studies of Unstable Nuclei with Spin-Polarized Proton Target2016
Author(s)
Satoshi Sakaguchi, Tomohiro Uesaka, Takashi Wakui, Sergey Chebotaryov, Tomomi Kawahara, Shoichiro Kawase, Evgeniy Milman, Tsz Leung Tang, Kenichiro Tateishi and Takashi Teranishi
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Journal Title
Proceedings of International Symposium on Spin Physics (SPIN2014), International Journal of Modern Physics: Conference Series
Volume: 40
Pages: 1660071/1-6
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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