2014 Fiscal Year Research-status Report
窒化物半導体ナノ構造のキャリアダイナミクスと光機能
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25800180
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
猪瀬 裕太 上智大学, 理工学部, 研究員 (90634501)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | キャリアダイナミクス / 発光効率 / 量子効率 / オージェ効果 / 誘導放出 / 分布帰還型レーザー / ランダムレージング / ディラックコーン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、窒化物半導体GaN,InGaN,InNの高品質なナノサイズ柱状結晶を対象として、(A)発光効率から発光デバイスとしての特性を評価、(B)キャリアダイナミクスとナノサイズ効果の解明、(C)集団配列効果により生じる光機能の開拓、という3つの目的に向かって研究を進めている。 (A)については、まず25年度に引き続きInGaN試料の内部量子効率の評価を行い、薄膜よりもナノコラムの方が発光効率が大幅に大きいことを明らかにした。また、デバイス評価にとってより実用的な値である外部量子効率を測定するために積分球を用いた新たな光学測定系を構築した。外部量子効率の正確な評価は一般的に難しいが、その厳密な数値算出はデバイス評価にとって非常に重要である。 (B)においては、25年度はInGaN試料に関するキャリアダイナミクスの基本的な振る舞いを明らかにした。26年度はさらに詳細な物性を明らかにすべく光学測定を行い、In組成揺らぎによるキャリアの局在幅が薄膜よりもナノコラムの方が狭いことなどを実験的に確認した。InGaNのようにキャリアが局在する系では物性が複雑になってしまうが、多角的な評価によって全容が明らかになりつつある。 (C)に関しては、25年度に集団配列効果に起因した誘導放出現象が構造ゆらぎの影響を敏感に受けることを実験的に確認した。26年度はさらに角度依存性や偏光依存性から、集団配列効果によって試料内で発生している分布帰還メカニズムを直接的に観測することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
26年度は前年度からさらに踏み込んだ研究を行ったが、全体としての進展は当初の計画よりも遅れているので(3)の達成度であると評価できる。それぞれの研究目的における進展については、以下のとおりである。 (A)に関しては、ナノコラムの内部量子効率が薄膜よりも大幅に大きいことを明らかにした。さらに外部量子効率を算出すべく積分球の実験系を新たに立ち上げた。 (B)ではInGaNナノコラムのキャリア局在幅が薄膜より小さいことが判明した。さらなる進展に向けてInGaNそのものの性質とナノサイズ効果とを分離する為にナノコラムのサイズ依存性の評価を予定していたが、26年度には達成できなかった。 (C)においては集団配列効果に起因した定在波の直接的観測に成功したが、現在のところ誘導放出以外の応用研究にまでは至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は、26年度のやや停滞した進捗状況を打開していく。 研究目的の(A)に関しては、26年度に立ち上げた積分球系を用いて正確な外部量子効率を算出し、また内部量子効率と外部量子効率を結びつける取り出し効率の計算にも着手していく。これによって、窒化物半導体にとって重要なデバイス評価を厳密に行っていく。 (B)では、これまで不明瞭だったナノサイズ効果の影響を明らかにすべく、InGaNおよびGaNナノコラムでのサイズ依存性測定を進めていく。InGaNのコラム径依存性はすなわち結晶品質の違いを見ることになるので、発光効率を決めているキャリアダイナミクスを明らかにできる。またGaNは組成揺らぎがなく、純粋にサイズ効果を観測できることが期待される。 (C)においては、集団配列効果を利用したディラックコーンの発現を目指していく。これは、光バンド構造が縮退点で異常な分散曲線を示す状態のことで、配列パラメーターの最適化によって実現され得る。26年度までの研究で構造ゆらぎによる光局在の発生が明らかになっているが、ディラックコーンでは構造ゆらぎの影響を回避できるほか、特異な光伝播の発現も期待できる。27年度は誘導放出からこのような新奇光機能の開拓に繋げていく。
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