2013 Fiscal Year Research-status Report
特異な量子基底状態をとるカゴメ格子反強磁性体の新物質開拓
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25800188
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Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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| Research Institution | Nagoya University |
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Principal Investigator |
岡本 佳比古 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (90435636)
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| Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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| Keywords | 幾何学的フラストレーション / カゴメ格子 / 新物質探索 |
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| Research Abstract |
本課題の目的は、カゴメ格子反強磁性体の新物質開拓を行うことにより、特異な量子基底状態の実現を目指すことにある。H25年度において、(a) S = 1/2カゴメ格子反強磁性体エドワードサイト、(b) S = 5/2カゴメ三角格子反強磁性体NaBa2Mn3F11、(c) S = 3/2ブリージングパイロクロア格子反強磁性体LiACr4O8 (A = Ga, In)という3種類の新しいフラストレート磁性体の磁気的性質を報告した。
エドワードサイトCd2Cu3(SO4)2(OH)6 4H2OはCu2+イオンからなる非常に二次元性の高いカゴメ格子をもち、スピン1/2カゴメ格子反強磁性体のモデル物質となり得る。純良試料を用いた物性測定により、低温で幾何学的フラストレーションの影響が磁気的性質に現れていること、おそらくDM相互作用により4.3 Kで傾角反強磁性秩序することを明らかにした。
NaBa2Mn3F11ではスピン5/2をもつMn2+イオンがカゴメ三角格子というカゴメ格子と三角格子の両方の特徴を有する新しいフラストレート格子を組む。本物質の純良試料を用いた物性測定により、低温で特異なcuboc型の反強磁性秩序が実現している可能性を指摘した。
LiGaCr4O8とLiInCr4O8は共にAサイト秩序のスピネル酸化物である。中性子回折データを用いた構造解析によりスピン3/2をもつCr3+イオンがボンド交替したパイロクロア格子であるブリージングパイロクロア格子を組むことを明らかにした。前者は一次転移と二次転移を隔てる三重臨界点に極めて近傍に位置する磁気転移する点で、後者は四量体一重項状態の形成によるスピンギャップ的な振る舞いを示す点で興味深い。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本課題では、特異な量子基底状態の実現を目指すため、主に銅鉱物系のカゴメ格子反強磁性体において新物質探索を行う計画を立てた。銅鉱物系はこれまで重点的にフラストレート系の物質探索がおこなわれてきた舞台であり、新しいモデル物質が見つかる可能性は高い。しかし、H25の成果では、銅鉱物系の新物質エドワードサイトを見出しただけでなく、フッ化物が新しいカゴメ格子反強磁性体の舞台となり得ること、また、さらにブリージングパイロクロア格子という新しい幾何学的フラストレート格子をもつ磁性体を発見した。従って、特異な量子基底状態の実現を目指すための新物質開拓は当初の計画以上に進展しているといえる。
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| Strategy for Future Research Activity |
銅鉱物系のスピン1/2カゴメ格子反強磁性体については、エドワードサイトに引き続いてさらなる新物質探索を行う。カゴメ三角格子をもつNaBa2Mn3F11については、中性子散乱やNMR実験によりcuboc型の反強磁性秩序が実現しているかどうかを確かめる。また、この結晶構造において新物質探索を行う。ブリージングパイロクロア格子をもつLiGaCr4O8とLiInCr4O8については、低温で現れる構造・磁気転移の詳細を明らかにし、また両者の固溶体の合成によりボンド交替の程度を制御することでさらなる物性発現を目指す。
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