2014 Fiscal Year Research-status Report
核磁気共鳴法を用いたスピン流生成とスピン流伝導、生成機構解明
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25800209
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
中堂 博之 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門、先端基礎研究センター, 研究員 (30455282)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スピントロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
新たなスピン流生成源として、核スピン系の角運動量を用いる。対象物質として自発磁化のある強磁性体とフェリ磁性体を用いる。これらの物質では核磁気共鳴(NMR)信号が極端に増幅する効果が知られている。これは核スピン系の励起状態における歳差運動に、電子系の磁化が追随して回転するためである。この核スピン系と電子系の磁化との相互作用を核スピンポンプの増幅機構として利用する。具体的な実験系としてPt/YIG(Yttrium Iron Garnet)を用いた。昨年度用いたバルクYIGの試料上にPt(膜厚10nm線幅100um)とAu(膜厚100nm線幅100um)をジグサグに配線して10倍程度の増幅を図った試料に対して、ロックインアンプによる測定を行ったが信号検出には至らなかった。そこでEBリソグラフィーによる微細加工に取り組んだ。YIG薄膜(膜厚1um)上にPt(膜厚10nm線幅10um)とAu(膜厚100nm線幅10um)のジグザグ配線試料を試作したが、基板上の微細なゴミのために断線が生じた。数度の作成を試みたが断線は回避できなかった。 また、音響スピンポンプの微視的機構解明を目指し、YIGに超音波印加時の57Fe NMRの核スピン格子緩和時間(T1)測定を行った。超音波をYIGに印加すると、フォノンが誘起され、フォノンーマグノン相互作用によってYIGのスピン温度が上昇し、これが駆動力となってYIGに貼り付けたPt層にスピン流を誘起すると考えられている。この時のマグノンの状態密度数の変化を57Fe NMRのT1を通してとらえることを目的とする。YIGバルク単結晶に3MHzで共振するピエゾ素子を貼り付け、超音波印加を行いながら室温から窒素温度までの測定を行ったが変化は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
核スピンポンプの実験においては、バルクYIG上にPt(膜厚10nm、線幅100um)とAu(膜厚100nm、線幅100um)をジグサグに配線した試料に対してナノボルトメーターとロックインアンプによる信号検出を試みたが信号は検出できなかった。YIG薄膜(膜厚1um)上にEBリソグラフィーによりPt(膜厚10nm、線幅10um)とAu(膜厚100nm、線幅10um)と100倍増幅のジグザグ配線試料を試作したが、基板上の微細なゴミのために断線が生じ、数度の作成を試みたが断線は回避できず、測定には至っていない。また、バルクYIGから薄膜YIGに試料を変更したことで、昨年度問題となった磁場掃引による同調回路のドリフトは抑えられた。 音響スピンポンプの実験においてはピエゾ素子を励起するためのRF導入によって、NMR信号に混線する事態が生じた。この問題はNMR信号線にローパスフィルターを挿入することで回避でき、T1測定を行うことができるようになった。しかしながら、超音波励起状態においても、T1には何の変化が見られなかった。現象を捉えるには至っていないが予想外に生じた問題を解決し測定を実行できていることは評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
核スピンポンプの実験においては微細加工プロセスの見直し、断線回避のための配線設計の見直し、補修プロセスの構築等を行い、引き続きYIG/Pt系において実験を進めるとともに、他の試料を検討する。強磁性体試料としてはCo系やMn系を検討する。これらを含む強磁性体は比較的多く、また、59Coや55Mnは自然存在率100%であり、57Feの希薄な自然存在率(2.14%)に問題があるとすれば、これを回避できる。また、理論的にも見直しを行い、緩和時間が短いほど角運動量移行が大きく、スピンポンピングの信号強度が増大する点を重視した実験系を検討する。現在主流のパルスNMR測定法による測定可能な時間スケールは10us以上である。これより緩和が速いとそもそも共鳴が観測できないため、10s程度の緩和時間を持つ試料を検討する。現在候補としているのは磁気転移直上のクリティカルスローイングダウンを利用することである。例えば反強磁性体CuOはネール温度が約220Kであり、磁気転移直上において急激に63Cu NMRの緩和率が増大することが知られている。また、クリティカルスローイングダウンでは電子系の時定数が急激に長くなり磁気転移直上では核スピン系の時定数と同程度になるため、電子系と核スピン系の間のエネルギーの移行が大きくなる。角運動量移行の程度に関しては未知ではあるが、実験によって確かめることを検討している。 音響スピンポンプ状態におけるマグノン緩和の測定はより低温での測定を行う。ピエゾ素子のインピーダンスマッチングが低温では悪くなることが考えられるため、マッチング回路を検討する。また、試料の検討も行う。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Observation of Barnett fields in solids by nuclear magnetic resonance2014
Author(s)
H. Chudo, M. Ono, K. Harii, M. Matsuo, J. Ieda, R. Haruki, S. Okayasu, S. Maekawa, H. Yasuoka, and E. Saitoh
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Journal Title
Applied Physics Express
Volume: 7
Pages: 063004-1,4
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Direct observation of Barnett field by spinning nuclear magnetic resonance2014
Author(s)
H. Chudo, M. Ono, K. Harii, R. Haruki, S. Okayasu, M. Mastuo, J. Ieda, S. Maekawa, H. Yasuokaa, and E. Saito
Organizer
ICC-IMR/20th REIMEI International Workshop on Spin Mechanics 2
Place of Presentation
Sendai, Japan
Year and Date
2014-06-21 – 2014-06-21