2014 Fiscal Year Research-status Report
希土類元素・遷移金属・水のリザーバーとしての緑簾石族鉱物の構造特性
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25800296
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
永嶌 真理子 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (80580274)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 緑簾石族鉱物 / 遷移金属イオン / レアアース / 結晶構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,天然・合成緑簾石族鉱物における希土類元素や遷移金属の陽イオンおよび陰イオンの挙動が結晶構造に与える影響を系統的かつ体系的に解明し,配位多面体ごとのキャラクタリゼーションを行うことで造岩鉱物一般に広く適用できるイオン置換と結晶構造変化,水素結合との関係に関する一般則を見出すことを目的する.本研究はその目的の達成のため以下の4つの課題を設定した:(1) 陽イオンの結晶内分配の支配要因:バナジウムの挙動の解明と3価の遷移金属イオン間の分配係数の決定, (2) 6配位席における遷移金属イオンの挙動:Ca-REE3+置換を伴う緑簾石族鉱物の系統的な検討, (3) 陰イオン(OH, OD基)が結晶構造に与える影響:重水素と水素, (4) 構造的類縁鉱物群における陽イオンの挙動と水素結合システム:配位多面体の特性の理解.これまで課題(1), (2)については下記のように当初目標以上の研究成果が得られている. (1) 含Vクリノゾイサイトの合成を世界で初めて成功させ, X線構造解析を用いてこれまで知られていなかったバナジウムの挙動を決定し,結晶構造変化への影響を明らかにした。さらにこれまでFeを含むクリノゾイサイトや緑簾石のみで指摘されていた不混和領域の存在を確認した(Nagashima et al. in preparation). (2) レアアースを含む緑簾石族鉱物である褐簾石に属する3種の新鉱物「ランタンバナジウム褐簾石」「ランタンフェリアンドロス石」「ランタンフェリ赤坂石」の研究を通じて,複合置換(Ca2++Me3+=REE3++Me2+)が結晶構造に与える影響を検討し,さらにMn2+の挙動を既知の研究とあわせて系統的に理解した.この成果は,国際誌に2編の論文として公表済みである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は,(1)合成含バナジウムクリノゾイサイトの化学的・結晶学的な特徴を明らかにすること, (2) 含レアアース緑簾石族鉱物である本研究で見出した3種の新鉱物の化学組成と結晶構造変化を系統的に理解することを課題とした。 課題(1) 既に前年度に含バナジウムクリノゾイサイトの合成を初めて成功させたが,その生成条件や特性に関しては不明な点が多かった.そこで明らかになった生成領域に基づき,さらに異なる温度圧力条件下で実験を繰り返した結果,含V-クリノゾイサイトとその共生相であるゾイサイトの安定領域を見出し,さらにクリノゾイサイトにおいて組成不混和が存在することを明らかにするなど,生成物のキャラクタリゼーションを進めることができ,当初計画以上の成果を得ることができた. 課題(2) 含レアアース緑簾石族鉱物の合成の困難性から,天然試料の検討を並行して行い,3種の新鉱物発見につながった.複雑な化学組成を持つそれらの鉱物の詳細な検討により,レアアースを含む緑簾石の化学組成と結晶構造変化の関係を先行研究の成果などを合わせて検討することで,一定の規則性を見出すに至った.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も基本的に当初計画に則って進めるが,合成生成物を短期間で得るのが困難な場合は代替的に天然試料を用いた検討を行い,課題の解決に近づくよう努力する.本研究では,主に緑簾石族鉱物およびその類縁鉱物群を対象とするが,常に最終目標である「造岩鉱物に広く適応できるイオン置換と結晶構造変化,水素結合との関係に関する一般則の確立」ということを念頭においた検討を進めたい。来年度は,(1) 陰イオン(OH, F)の陽イオンの分布や結晶構造への影響の検討,(2) 緑簾石類縁鉱物群の結晶化学的検討を通じた配位多面体の特性の統合的な理解とこれまでの成果の総括をすすめる.
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Cuprobismutite group minerals (cuprobismutite, hodrushite, kupckite and paderaite), other Bi-sulfosalts and Bi-tellurides from the Obari mine, Yamagata Prefecture, Japan2014
Author(s)
Izumino, Y., Nakashima, K., Nagashima, M.
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Journal Title
Journal of Mineralogical and Petrological Sciences
Volume: 109
Pages: 177-190
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Episodic magmatism at 105 Ma in the Kinki district, SW Japan: Petrogenesis of Nb-rich lamprophyres and adakites, and geodynamic implication.2014
Author(s)
Imaoka, T., Nakashima, K., Kamei, A., Itaya, T., Ohira, T., Nagahsima, M., Kono, N., Kiji, M.
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Journal Title
Lithos
Volume: 184-187
Pages: 105-131
DOI
Peer Reviewed
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