2013 Fiscal Year Research-status Report
水と二酸化炭素から発生する炭酸を用いたバイオマスの環境低負荷分解反応の開拓
Project/Area Number |
25810078
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
本九町 卓 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70404241)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 二酸化炭素 / 天然分子 / 糖 |
Research Abstract |
これまで、天然高分子を原料とする分解反応の開拓が精力的に進められているが、特殊な触媒の開発、触媒の後処理、副反応の制御など様々な問題を有する。コストの面で負担がからない手法としては硫酸を用いた加熱加水分解があるが、硫酸は強酸性で中和除去が面倒である。また中和の際に生成する硫酸塩の廃棄の問題もある。 本研究では、水と二酸化炭素から発生する炭酸を用いた天然高分子の酸触媒分解反応を開拓することを目的に臨界圧力付近の高圧二酸化炭素を用いて炭酸を生成し、これを用いた糖類の反応を行った。多糖のモデルとして単糖類を用いての反応を行い、糖そのものが炭酸存在下で示す反応およびその選択制について種々の反応条件(温度、圧力、水の量)などがおよぼす影響について比較検討した。 セルロースおよびアミロースの構成単位であるグルコースは、炭酸の存在により、脱水反応が起こり、5-ヒドロキシメチルフルフラールを生成することが明らかとなった。この際、生成した5-ヒドロキシメチルフルフラールが分解することで生成したと考えられる化合物も同時に検出した。反応条件の中でも温度の影響は特に顕著で、120度ではほとんど反応がおこらないのに対して150度以上ではグルコースが完全に消費された。また、180度以上になると黒色固体が生成した。圧力は、二酸化炭素の導入量に依存して高くなり、二酸化炭素を導入することでグルコースの転嫁率は、著しく上昇したが、7 MPaで漸近した。このことはおそらく二酸化炭素の相転移に由来するものと考えられる。 以上のとおり、通常は硫酸のような強酸を用いる反応を炭酸のような弱酸によって誘起することが可能であることを明らかとした。さらなる詳細な条件検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二酸化炭素加圧下での反応は、単糖類を用いた際、目的とするグルコシド化反応を誘起することを明らかとした。二酸化炭素の圧力、反応温度、反応時間は、糖の転嫁率へ影響を与えることが明らかとなった。しかしながら、何らかの副反応が起こっており、選択率が低下することが明らかとなった。特に高温では、選択率が著しく低下した。このことは、原料の糖が熱により分解、水酸基の脱離および異性化等の副反応を誘起するためと考えられる。さらに糖から生成した有機酸が副反応を加速することも推察される。 一方で低温での反応では上述の副反応はほとんど観測されず、選択率は高い値をとった。
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Strategy for Future Research Activity |
高圧二酸化炭素を用いて反応を行ったところ、糖が温和な条件で反応することを明らかとした。特に温度条件に対して顕著な変化を示すことが明らかとなりつつある。より詳細な条件設定を行い反応の精密制御を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究において購入予定であった液体クロマトグラフ制御システムが大幅に値下げされたためである。 高速液体クロマトグラフィーのためのカラム、また試薬を購入する予定である。また反応条件の設定により生成物が異なることが明らかとなったため、生成物の構造道程のために液体クロマトグラフィー用の消耗品、NMR測定用の重溶媒などが大量に必要となったのでこれらを購入する予定である。
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