2013 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍血管内皮幹細胞制御による新規血管新生阻害療法の開発
Project/Area Number |
25830080
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
内藤 尚道 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (30570676)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 血管内皮幹細胞 / 腫瘍血管 / Side population / 血管新生 |
Research Abstract |
本研究は腫瘍血管内皮細胞中に血管内皮幹・前駆細胞が存在することを示し、腫瘍血管におけるその役割を解明し、基礎研究レベルでの血管内皮幹・前駆細胞を標的とした新規治療法の開発を目指している。本年度は1.腫瘍血管における血管内皮幹・前駆細胞の機能解析(細胞の同定、特徴の解明、移植)及び2.既存の血管新生阻害剤との関係性の評価を行った。 1.最初に幹細胞様の性質を示す血管内皮Side population(SP)細胞が腫瘍血管中に存在することをフローサイトメトリー(FACS)解析を用いて明らかとした。腫瘍血管中では正常組織と比べSP細胞が高頻度で存在していることが明らかとなった。また培養実験を行うと血管内皮SP細胞はより高い増殖能を持つ事が明らかとなった。さらにSP細胞を腫瘍細胞とともに、マウスに移植をするとSP細胞由来の血管が構築され、腫瘍血管の構築にとってSP細胞が非常に重要である可能性が示唆できた。 2.現在多種類の血管新生阻害剤が抗癌剤として臨床で用いられている。しかしこれらは、動物実験で期待されたほどの効果を示さず、また長期に亘って使用すると薬剤耐性が生じることが知られている。正常組織の血管内皮SP細胞は薬剤排出ポンプを高度に発現していることが分っており、腫瘍血管での薬剤耐性機序に血管内皮SP細胞が関与している可能性があると考え解析を行った。解析の結果、腫瘍血管内皮細胞でも正常組織と同様にSP細胞で薬剤排出ポンプの発現が高いことが明らかとなった。血管新生の促進因子であるVEGF-VEGFR2経路を標的とした薬剤が主に臨床で使用されている。そこでこれらの薬剤をマウスに投与し解析を行うと、血管内皮細胞内で効果を示すと考えれる薬剤ではSP細胞の比率が高くなることが明らかとなり、薬剤耐性機序の一部に血管内皮SP細胞が関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下3点に関して重点的に解析を進めている(1)腫瘍血管内皮におけるSP細胞の同定、(2)血管新生阻害剤投与後のSP細胞の応答、(3)腫瘍血管内皮SP細胞の新規表面抗原の同定。 (1)SP細胞の分離・同定に関してはおおむね順調に進んでいる。各種細胞株を用いて血管内皮SP細胞が腫瘍血管中にも存在していることを明らかにできた。また、腫瘍細胞の皮下移植モデルだけでなく同所移植モデルも行い、正常な状態に比べ腫瘍環境下ではSP細胞の血管内皮細胞中に占める割合が増加することが明らかとなった。細胞周期解析、in vitroでの培養実験も行った結果、概ね想定した通りの結果が得られている。自然発癌モデルマウスを用いての解析を行う予定であったが、マウスの入手ができておらず来年度以降に解析を行う予定である。 (2)VEGFR2阻害剤と、VEGFの中和抗体を用いて、それぞれの薬剤投与後のSP細胞の変化を解析した。マウスでは血管新生阻害剤が非常によく効くために、通常投与量だと血管内皮細胞はかなり少なくなるので、血管内皮細胞が残存する程度まで投与量の調節を行い実験を行っている。それぞれの薬剤で投与量の調整が異なるため、実験系の構築に時間を要しているが、実験系の構築出来た薬剤に関しては順調に進んでいる。 (3)新規表面抗原の同定は来年度以降に行う予定である。現在並行して正常組織でのSP細胞の新規表面マーカーの同定を行っている。こちらの結果は出揃いつつあり、腫瘍血管内皮への応用も視野に入れて解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は(1)血管新生阻害剤投与後のSP細胞の応答、(2)新規血管内皮SP細胞マーカーの同定及び(3)SP細胞を標的とした新規治療法の開発を行う予定である。 (1)本年度に引き続き解析を行う予定である。現在までに2種類の薬剤での評価を行ったが、さらに薬剤の種類を増やし解析を行う。血管新生阻害剤の投与後SP細胞だけが残存するならば、腫瘍内での血管内皮SP細胞の存在部位が明らかにできる可能性を想定していたが、現在までの解析の結果、SP細胞だけが残存するわけでないことが明らかになりつつある。血管内皮SP細胞の存在部位を証明することは、細胞の性質を明らかとする上では重要である。存在部位に関しては次の(2)の解析を通じて明らかとしたい。 (2)新規血管内皮SP細胞マーカーを探索するためにSP細胞と、それ以外の内皮細胞をそれぞれFACSを用いて分離しマイクロアレイ解析を行う予定である。正常組織でのマイクロアレイの解析結果はすでに得られており、腫瘍血管でのマイクロアレイ解析を目指す。 しかし腫瘍中の血管内皮細胞を大量に得ることは難しいということが、今までの解析からわかってきている。実験の状況次第では、正常組織で得られたデータを基に、腫瘍血管内皮SP細胞でも発現している因子を同定していくよう修正が必要となることも念頭に置いて解析を進めていく。 (3)新規因子を同定後は当初の予定通り阻害剤が存在すれば阻害剤を用いて血管内皮SP細胞の阻害を行う予定である。また、血管内皮細胞全般に及ぼす影響を調べるため、培養細胞系でのノックダウン等も検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費が抑えられ次年度使用額が生じた。解析に用いる試薬等を現在所有しているものを使用したために、一部の物品で本年度は費用が生じなかった。来年度以降に購入予定である。 その他の費用としては、物品を購入して解析を行うのではなく、外部委託を行ったほうが効率の良い実験系があったためその費用として使用した。 引き続き申請時の計画に沿った方針で使用していく予定である。本年度購入しなかった物品に関しては、来年度に購入する予定である。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] Critical role of Trib1 in differentiation of tissue-resident M2-like macrophages.2013
Author(s)
Satoh T, Kidoya H, Naito H, Yamamoto M, Takemura N, Nakagawa K, Yoshioka Y, Morii E, Takakura N, Takeuchi O, Akira S.
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Journal Title
Nature.
Volume: 495(7442)
Pages: 524-528.
DOI
Peer Reviewed
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