2013 Fiscal Year Research-status Report
機能性エクソソームを介した腫瘍細胞ー血管内皮細胞間コミュニケーション機序の解明
Project/Area Number |
25830089
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
梅津 知宏 東京医科大学, 医学部, 助教 (40385547)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | エクソソーム / miRNA / 低酸素環境 / 細胞間相互作用 / 血管新生 / がん微小環境 |
Research Abstract |
本研究では、がん微小環境における“エクソソーム“を介した細胞間コミュニケーション機序の解明を目的とし、申請者が独自開発したin vitroモデル系とタイムラプスイメージング技術を用いて「細胞間メッセンジャー」としてのエクソソームの機能について解析することを目的としている。 当該年度では申請者が独自開発したin vitroモデル系の評価系の改良およびエクソソーム産生細胞(腫瘍細胞)における低酸素ストレスの影響について解析を行なった。エクソソーム産生能が非常に高い「慢性骨髄性白血病由来細胞株K562」、造血器腫瘍の中でも血管新生との関係が深い「多発性骨髄腫由来細胞株RPMI8226、KMS-11、U266」、および固形癌である「肺小細胞がん由来細胞株RERF-LC-Ad2」における低酸素応答能と、そのエクソソーム内のmiRNAのプロファイリングを行なった。 上記の腫瘍細胞株を低酸素インキュベーター(CO2 5%, O2 1%, MCO-5M, Sanyo)内で24-72時間または長期間(1カ月以上)培養し、低酸素応答性の指標としてhypoxia-inducible factor-1α(HIF-1α)の発現をウエスタンブロッティングにて発現を確認した。さらに、低酸素条件で培養した腫瘍細胞由来のエクソソームを採取し、HUVECsの培養系に添加して管腔形成能を観察した。その結果、低酸素に曝露された腫瘍細胞由来エクソソームは、血管内皮細胞の血管新生を誘導することが明らかとなった。 また、ナノ粒子解析装置(NanoSight, Quantum Design Japan)を用いて、低酸素条件下で培養した腫瘍細胞が放出するエクソソームの「個数」「濃度」「サイズ(粒子径)」を測定した結果、低酸素に曝露された腫瘍細胞由来エクソソームは、量がコントロールに比べ倍増していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究進捗および研究費使用状況は、応募時の研究計画通りであり、その理由としてエクソソーム採取のプロトコルが確立していたこと、エクソソームの放出量が多い細胞を選択して研究を進めたことに理由があると考えられる。 また、長期間低酸素環境に曝露した腫瘍細胞ではエクソソームの放出量が増加するという新規の知見も見出され、今後の研究の発展性が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、低酸素・低栄養条件下で培養した腫瘍細胞由来エクソソームの標的細胞(血管内皮細胞)による取り込み機構および血管新生誘導能について解析を行う予定である。 管腔形成時の血管内皮細胞によるエクソソーム取り込み現象をタイムラプスイメージングで解析するとともに、初年度で得られたmiRNAプロファイリング結果をもとに低酸素環境において腫瘍血管新生を誘導するエクソソーム含有miRNA群を同定し、そのアンチセンスmiRNAを含有させた「腫瘍血管新生抑制型エクソソーム」の作成および腫瘍細胞に導入し、この「血管新生抑制型エクソソーム」が、HUVECsの管腔形成能を抑制できるか検証する。さらに、in vitroモデルを用いた解析により、エクソソームによる「抗血管新生」の可能性を示し、将来的に実験動物を用いたin vivoモデルでの検証に発展させていく。 最終的には、エクソソームを介した細胞間コミュケーションという新たな視点から解析を行い、既存の細胞間相互作用とエクソソームによる情報伝達との関係を明らかにし、エクソソームの生理機能を利用したがん治療法の開発に結びつけていくことを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度に参加した学会が国内であったため、旅費が当初の予算金額より低くなったことが理由として挙げられる。 次年度繰り越し金額は5万円以下であり、次年度の研究費の使用計画における消耗品等の計画には影響は無い。 次年度では論文投稿を予定しており、英文校正費用がかかると予想されるので、次年度繰り越しとなった金額については論文投稿関連費(英文校正)に補充する予定である。
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