2013 Fiscal Year Research-status Report
新たなABC蛋白質ファミリーに属する鉄硫黄クラスター生合成装置の作動ダイナミズム
Project/Area Number |
25840023
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
和田 啓 宮崎大学, テニュアトラック推進機構, 助教 (80379304)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 鉄硫黄クラスター / 結晶構造解析 / 立体構造 / 鉄硫黄蛋白質 / ABC蛋白質 |
Research Abstract |
鉄硫黄クラスター(Fe-S)は、SUFマシナリーと呼ばれる一連の蛋白質群により生合成される。これまでの申請者の成果により、SUFマシナリーの作動機構は、生物界最大の膜輸送体スーパーファミリー(ABC-transporter)の原型であり、共通した原理で全く異なる機能(クラスター合成と膜間輸送)を成し遂げるという驚きの可能性を示した。本申請ではその”心臓部”といえるコア複合体に焦点をあてる。この複合体は ATP 加水分解に共役して、鉄と硫黄原子をFe-Sクラスターへ変換することを予想している。本研究では、Fe-Sクラスター合成装置の作動メカニズムの全容解明を目的とし、構造決定だけでなく、その構造変化を可視化することを進めた。 [1]コア複合体の構造基盤の確立 Fe-Sクラスター合成のコア複合体(SufB1-SufC2-SufD2複合体)は、それぞれの遺伝子を大腸菌内で共発現させることで精製することに成功した。構造決定に向けて、精製した複合体蛋白質を用いて結晶化スクリーニングを進めた結果、幾つかの条件において微結晶を得ることができた。 [2]蛍光分光法によるATP依存的な構造変化の実証 精製したコア複合体(SufB1-SufC2-SufD2複合体)を用いて、ATP依存的な構造変化を蛍光分光器によって検出することを試みた。ここでは、構造変化をロックするような変異を導入することで、蛍光変化が検出できるように工夫した系を用いた。コア複合体はATP存在下において、疎水領域が増加することを実験的に捉えることができ、明らかにコア複合体には構造変化が生じていることを実証した。さらに、ウエスタンブロッティング法によって、SufCと呼ばれるATPaseドメインが複合体中でダイマー化することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の計画では、[1]コア複合体の結晶化、[2]コア複合体の蛍光測定を予定していた。研究計画に従い、大腸菌での共発現によって複合体蛋白質を大量発現し、さらに種々のクロマトグラフィーによりコア複合体の精製を進めた。ここで得られた精製コア複合体を用いて、[1]8000条件以上の結晶化条件スクリーニングを実施し、微結晶を得ることに成功した。さらに、[2]蛍光分光器と蛍光試薬[Bis-ANS, ANS]を用いて、ATP依存的な構造変化を実証した。以上のように、結晶化スクリーニングは予定より早く進んでおり、研究全体としてはおおむね計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度も引き続き研究計画書通りに進めることを予定しており、無酸素条件下での結晶化を幅広く展開予定である。また、蛍光測定結果(および電子顕微鏡3D再構成)を原著論文としてまとめることも計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本計画では、物品費として結晶化スクリーニング用の試薬およびディスポプラスチック類、旅費として放射光施設での回折X線測定旅費を計上していた。実際の研究では、結晶化段階が予想以上に順調に進んだことで、経費の大幅節約が可能となった。 本研究計画の目的を達成する為には、Fe-Sクラスター結合状態の構造を決定することが不可欠である。つまり、平成26年度には無酸素条件下での結晶化を進める計画となっている。今後、当初の予定より幅広くスクリーニングすることを計画しており、前年度の差額は同計画に有効に活用できる。
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